「WinWin」


産地では、男女を問わず年配の方達はいずれもすばらしい顔ばかりである。都市部には欲ボケをした年配者も数多くいるが、本当に農業は人のすばらしい面を引き出していく働きがあるのであろう。
21世紀で活躍する花作りは、一つに生産技術が優れ、生産を請け負う農家であり、適時、適質、適量が欠かせないから、かなり技術が高くなければならない。昨日は出先で新幹線の時間がまだあったので、佐久市農協にお邪魔した。花担当の小林さんに話を伺うと「今年のような天気でも、盆の需要期にきちっと出してくる人が居るんです。すばらしい技術です」と。そういう生産者は今後とも高収入を得ることが出来るし、むしろ流通サイドからは専属になってくれと言われるのではないかと思われる。
二つめは、技術開発力のある産地や生産者で、絶えず新しい提案がそこから起ってくる。まさにメーカーである。
三つめは、共選共販ないし事業家農家で、1品目では最低5千坪以上の面積が必要となろう。そうでないと現在の市場流通でも当てにされる状況には今後なっていかないだろう。
ここ10年弱でこういう3つのパターンに枝分かれし、専門化していくわけだが、この時年配の生産者の方は、すばらしい顔のままでいるだろうか。私は日本人のメンタリティーからして、自然を征服したり、金だけ考えたりはしないのではないかと思う。それは作物から日々教えられるのではないか。何も全てが天候や自然のせいで人の無力感を教えられているのではなく、他人のせいや運命のせいにしてはならない。やっただけのことは宇宙の法則として帰ってくる。結果オーライということは有り得ない。ということを作物との対話の中でいやというほど教えられるのではないかと思う。よって、ひたむきに生きていき、それが年配者の良い顔となって現れているのではないか。昨日、とある生産者の圃場や選花所を視察し、話を聞きながらつくづく思った次第である。さすれば人相手のサービスも、そのように考えていくことが必要で、競争社会のアメリカで良く言われるように、「Win Win(お互い良い状況)」を探っていくことが少なくともビジネス会において必要では、と感じて東京に帰ってきた。




1998/08/24 磯村信夫