「バブルは折り込み済み」バブルの意義


中南米経済が心配である。アメリカはブラジルを梃入れする事により、アジアの二の舞にならない様、各国に協力を呼びかけており、どうにか通貨危機を回避できそうな見通しが立ってきた。
その具体的な方策はドル安容認であった。日本経済のみを考えれば、今円高になると、輸出企業も具合が悪くなり、さりとて消費不振で円高メリットが経済の浮上策となる状況ではないのだが、この考えは日本が極東の片田舎で独自の生活をエンジョイできた頃の考え方である。
既に、世界経済の危機、特にアジア、ロシアと続いた通貨危機とデフレスパイラルを伴った世界経済の危機が、世界の機関車役であるアメリカの旺盛なる生産消費意欲を阻害しかねない状況になって来たので、行き過ぎのドル高是正という世界経済の勝ちパターンを壊す訳にはいかないのである。
僕はアージリスやガルブレイスが好きで読み進んできたが、特にガルブレイスは「バブル」について言及している経済学者なので、ご存知の方も多いと思う。ガルブレイスは「人の生活に、バブルは折り込み済みだ」と言う。バブルは崩壊する為にあって、その際まじめに努力した人とそうでない人を峻別する。淘汰が進む混乱期の中で、政府は真面目な人や不真面目な経営者に仕えていて失業した善良なる人々に力を貸す事を忘れてはならないと忠告する。混乱期の中から、シュンペーターの言う「イノベーション」が起こり、社会が進歩して行く。この視点こそ、これから少なくとも5年は続く日本経済の混乱を乗り切る各自のエネルギーとなろう。21世紀への「ノアの箱船」に乗るには、「自己責任」と「互恵の精神」、そして「ひたむきさ」と「知恵」が欠かせないのである。


1998/11/02 磯村信夫