シュンペーターの新結合


今年も一年間ご愛読ありがとうございました。来年も引続きのご愛顧をお願い申し上げます。
今年を振り返って、私が思う最も大きな事件は、ジョージソロスやノムラアメリカなどが、ロシア債の紙屑化からデリバティブで大損を出したことでした。
利己ゆえに利他的行動が経済界で成立つのは、先が見えないという前提があるからです。市場経済で今まで利己的に振舞ってきた人々や会社は、ゲームの理論と言われる学習をし、利他的になったり、シュンペーターの言う「新結合」〜M&Aや合併をしてきました。現在の市場では、情報技術が発達し、未来が現在に引き寄せられています。先物やデリバティブで未来の不確実性を取りこんで現実を担保しようという行為が、金融市場の暴走で「未来は取りこめない」ということが現実であるとわかったのです。
日本も適格年金401Kが来年4月から施行される新税制で、一つの流れとなると思われますが、このようにファンドが世界中でき始めています。こうなると、何らかの規制を世界中でしない限り、金融界はまた暴走することになるのです。野菜や花の先物市場開設が検討されていますが、このようにファンドマネージャーが鵜の目鷹の目で利殖を狙っている現状を考えますと、ここでもう一度「不確実な未来など取りこめない」という現実を思い起こしていくことが欠かせなくなっているのです。
実体経済で生活する我々は、不確実な未来を前提に利他的に行動し、シュンペーターのいうイノベーションや仲間作り(新結合)で存続を図っていく時代となっていくのです。


1998/12/28 磯村信夫