選手交替


その国のGDPの伸び率や生産人口の増加など、経済指数を上回っている業界を「成長産業」、おおよそイコールなのが「成熟産業」、下回っている業界を「衰退産業」という。とすると、花き産業は世界的に成長産業だと言える。
1920年来、食料品の家庭内支出シェアは下落する一方である。このことは食料品の総体的価格が下がっていっていることを示している。一方、スナックや外食産業などの支出に占める割合は、著しく上がってきた。その中に1980年以降、花の支出割合が増えてきているのだ。よく言われることが、20世紀に入って最も増えた国民支出は、政府や県庁職員など、いわゆる“行政マン”に対する支出であった。サッチャー、レーガンがフリードマンの学説を実行し、小さな政府を標榜したのは、実は健全な支出割合が崩れていたのを是正しようというものであった。現在この国で行われようとしている、公務員や公益法人のスリム化などは、大きくなり過ぎた国民の負担割合を、国民生活にとって必要不可欠なもののみ残し、後はリストラしようということである。
さて、花の話に戻すと、ここの所花き業界と一般産業界の常識やモラル、そして「モラール」の差異が広がってきた。その原因は、成長産業ゆえにバブル経済崩壊後も、ふやけた体質のままでも何ら病気をしなかったことにある。気がいい人達が多く、その意味で救われる業界ではあるが、その気の良さはエゴに裏打ちされている。花の仕事を天職とわきまえる、筋金入りの業界人にお目にかかることが数少なくなっているのだ。かって商店街で金額の上から青果商より自分を下においていた生花商は、この10年何も自分の職業に対する使命感を認識することなくきてしまったのであろう。ヨーロッパとアメリカの卸と小売店淘汰は、1988年頃から95年頃の約7年間起きたが、その間でも小売の分野は新しく事業を起こす人と、廃業する人のバランスがほぼとれていた。しかし卸は廃業者のみであった。
現在のヨーロッパ、アメリカの花き業界(小アジア、アフリカ、中南米などの産地を含む)は、プレイヤーの顔を見ているとほぼこの10年間に半分が入れ替わったのである。だから1995年より、この二大花き産業は時代にフィットし、再び成長を始めたのである。マーケティングが不充分だったことからおこるオーバープロダクション(供給過剰)は、新しいプレイヤーのマーケティング活動によってバランスがとれるようになっていった。今、日本の花き産業でも新しい予兆が見え隠れするようになってきている。


1999/05/03 磯村信夫