混沌


1週間お休みをいただきまして、先週は失礼いたしました。

さて、商況が軟調である。マーケットは供給過剰となっている。最大の理由は、ゴールデンウィークと母の日が近かったということである。それにより家計が出費を嫌がっているので、花まで金が回らなかったのであろう。
今日の荷姿を見ていると、北海道からの出荷も始まり、夏場の産地の初物が目についた。ボクシングで言えば第1ラウンドでパンチを食らったようなものだから、悲観なさっている向きもあろうが、この状況は少なくとも今月いっぱいは続くので覚悟してほしい。
短期的には需給バランスが崩れたということなのだが、3年ほどのスパンで見ると、本来昨年起こっていなければならないカオス(混沌)が、花き業界でもようやく始まったということである。この日本でも、先へ行く業界は、合同や倒産などを踏まえ、企業が少なくなってきている。生鮮食料品売り場は、○○屋さんがスーパーマーケットに変わっただけで、店舗の延べ面積は減少どころかむしろ増えているのではないか。だからこの分野でまず淘汰が起こる。花は(これはあくまでも小生の勘だが)去年の秋、起業と廃業のバランスがとれ、すなわちプラスマイナス0になったものの、スーパーマーケットやコモディティーを売っている雑貨屋さんなどがガーデニンググッズや水耕栽培のミニ観葉を売っているから、トータルして増えている。店舗数もバブル崩壊後増えたのは、確実にホームユースが伸びたからである。母の日であれば、昨年まで茶パツのお兄ちゃんもお母さんへ花を贈った。それが本格的なリストラで消費が冷え込んでいるのだ。当たっている商品は、ほとんどがMe-ism(自己に閉じこもる)に根差したもので、しみじみと暮らしを楽しむ花に目を向ける心持ではないのである。
しかし、こう悲観的なことばかりは言っていられない。物が不足しても、貧乏な人達は競争しない。皆で分け合って食べることの方が、一人で独占して食べるよりもよっぽどおいしいことを知っているからだ。豊かだから競争する。自分の取り分、相手の取り分、2人とも取ってしまってもまだそこに果実があるのだ。だからそれを争う。豊かだから競争する。そして亡者になる。亡者になっている自分にこの国の人達が気づいた時、花の消費も定着する。しかしその前に、我々は業界に今起こりつつある混沌を脱出する努力をしなければならない。それは、生産者と小売店共々、供給サイドの仲間として卸がオルガナイザーになり、あたかも一つの企業のようにコラボレートする必要があるのである。生産者ももう仕向先の卸は決めている。昔のようにばら撒くということはない。ここまできているのだから、このコラボレーションを作っていかないと消費者に花の良さを知ってもらう、買いたいと思わせることができないのである。
3年間は少なくとも続く混沌とした日本での花の時代がいよいよ始まったのである。


1999/05/17 磯村信夫