重み増す経営者の役割


 前回、「消費材としての花きの需要動向からすると、今年と来年は決して楽観できないものである」ことをお知らせした。
では、2%の経済成長がなされたその後はどうかというと、それでも合理化政策の手を緩める経営者はいないであろう。
変化を先取りし、経営資源を投資していかないと、社業の存続、発展が覚束なくなる。だから既存の収益源である事業のコストを、人件費まで含めますます絞っていくものと思われるからだ。

日本の経済界でも明確になってきたのが、取締役の役割とは「株主価値を高めることである」ということである。現段階では、まずは株式公開企業の取締役の意識が、2年前とは全く違っているということである。もはや日本の企業には、「サラリーマンの勲章としての取締役」という意識を持つ者はいない。この価値観が我々花き業界に伝播するのもそう遠くはないであろう。
こうなると、花き業界においても「不況だから会社が持たない、好況だったら大丈夫なのに」という思い込みは通用しなくなる。後から降り返ってみたら、不況の時の方が楽だったと言えるのではないか。

今、生産業界が農業新法施行に向けて動揺している。
担い手不足まで含め、どのようにしていくべきか悩んでいる産地も多い。今まで日本の農業形態は、個人、共選共販、法人の3つに分けられていたが、アメリカのように事業主体としてこのように考えるべきと思う。
1つは個人。この“個人”は、個人で出荷したり、共選共販で出荷したりもする。2つめは共同経営。リスクを考え、いくつかの品目を作り、それも長期間出荷することによって収入の安定を図る。5千坪が目安となる。3つめが法人化。これは会社としての規模になるので、当然5千坪より大きい。役員がいて従業員がいる、というスタイルである。

アメリカは補助金の問題もあり、政策誘導をしてきた。日本も今後は「ガイヤ思想(注1)」も農業の価値の中に入れながら、政策誘導をしていくべきものと考える。

(注1)「ガイヤ思想」
ギリシャの土の女神。“宇宙船地球号”という言葉は、ガイヤ思想を上手に表現している。GDPベースでいけば、タバコを吸う人が多ければタバコが売れる。病気になれば医者が儲かり、病気の危険があれば保険屋が儲かる。
このようにトータルまで考えると、GDPという数字の意味はおかしいものであると、現代は考えるに至った。




1999/07/12 磯村信夫