時間当りの生産性


 費用対効果をどのように考えるか?というのが、花き業界で差し迫った課題である。先週の土曜日、大田バラ会を開催し、大田花きにバラを出荷していただいている生産者の皆さん方と、ますます競争状態が高まること、そして仮に景気が良くなっても価格が上がらないことをまず確認した。その後、収益について議論を移した。

供給過剰の中で、力を今後とも発揮することができる事業体とは、「スマートで金がある」この二つを備えていくことが必要だからだ。時間の制約があり、面積当りの生産性だけに留まったが、実際は時間当りの生産性に触れたかった。時間当りの生産性が大切だという認識まで至ると、その人やその事業、延いてはこの国が成長をすることができる。

今、会社で問題になっているのは、コンピュータが社員の仕事時間の無駄を増長させているということだ。必要なのは時間当りの生産性であるから、商売に直結するよう時間を使わなくてはならない。管理部門であれば経費の削減が主だったところであろうし、営業部門であれば顧客との接点を増やすことこそ生産性を高める仕事であろう。

「メリット、デメリット」と費用対効果を簡単に言うが、この意識はアングロサクソンの持つ生来のものだ。花き業界ではオランダ人の持つもの、と言っても差し支えない。(元々アングロ・サクソン・ジュートの3部族は、現在のオランダからデンマークにかけて住んでいて、陸地に残ったのをオランダ人、ブリテン島に渡ったのがイギリス人という。)オランダ人はのんびりしているかのようだが、メリットを感じた時にはスピーディーに行動する。デメリットだと思った時は、何もしないかズルけることを生来的に知っている。これはイギリス人、アメリカ人も同様だ。

今まで日本人は勤勉であったから、このメリット・デメリットの物差によって行動してきたのは、家庭を経営する主婦や商売人達だけと言っても良く、農家や会社勤めの人達は、この意識がとても希薄である。ここに農家の収益性圧迫、卸売会社、仲卸業者の薄利がある。

今少し農場やら会社の収益が圧迫され、生存に関わるところまで来た時に、従業員は自らメリット・デメリットを考え、力を発揮するのである。しかしそれでは社員も会社もおかしくなってしまう。どの事業体がメリット・デメリットを物差に、パートさんに至るまで、自分の時間的生産性を上げていけるかにかかっているのである。




1999/08/23 磯村信夫