利益確保の為の5つの競争要因


 果物で名高い新宿タカノの場所が、グッチの大型店となった。もちろん果物を辞めたわけではないが、利益が以前ほど取れなくなってきたのであろう。それは代替品である花に、お見舞いやギフトの需要が取られ、カタログ販売などにより果物店の競争相手である新規参入業者が相次いだためであろう。それによって不動産業となった方がタカノ自体は利益を確保できると睨んだ。同様のことが果物店全体に言える。今までは同業他社との競争で、業界内で有利なポジションを得ることが競争優位を確保するために欠かせない条件であった。であるから、駅前には必ず果物店があった。しかし、業界の競争ではなく、結局代参品や新規参入者によって業界の利益そのものが少なくなってしまったのである。

業界の収益を決定する要因は、マイケル・ポーターによると上記の代替品、新規参入者、業界内の競争業者と売り手、そして買い手の5つがあるという。青果卸売会社の利益率が低いのは、競争業者が多く、卸売業界で稼いだ利益の一部を、交渉力の強い売り手(供給者)に取られ、交渉力の強い買い手にも吸い取られているからである。よって、業界内だけでも年商300億円以上の売上がないと、税引前利益を3億円出すことが難しくなってしまった。それに加え、ギフトで青果に代わって花を使うことが多くなり、外食や昼食でフローズンや輸入品が多くなって、代替品でも消費者は間に合うようになり、新しい流通チャネルを構築しようと商社や食品メーカーは業界に参入しだした。

ここに青果卸売業界の再編が叫ばれている訳だが、花の場合はまだ業界内での競争レベルの激化と、売り手、買い手との交渉力により、業界利益は一定水準確保できるものと言われている。しかし、花き業界で問題になっているのは、セリ機やコンピュータ投資などがここのところの単価安で利益を圧迫している所があるという点だ。これは生産農家や高級専門店にも言えることである。ROE、ROAを考えた経営を心がけ、迫り来る競争状態の激化に備えておくことが必要である。




1999/09/06 磯村信夫