花き業界の後れたロジスティックシステムを改善する


 敬老の日から彼岸の需要期で、久し振りに現場の手伝いをしている。品種数が多く、検品作業に手間がかかっている。量が多くなり、総数が合っても中身が違うものやら、数が足りぬものなど、一割の確率で起こるため、合理的に物流ができない。

当社では場内ロジスティックシステムのハードの設置は終わり、今後ソフトウエアや運用の調整に入る。(本年11月完成予定)その時、産地や荷の引取先である買参人に、いくつかお願いをしなければならないことが出てくる。このお願いは、花き流通業者では稀なことだが、それ以外では青果、水産業界を含め、普通のことである。

Ⅰ.パレットないし台車輸送。
Ⅱ.到着時間の設定(物日の時など、前日到着分は地下の定温庫や新しくできたストックヤード《温度管理施設装備》にて保管)で合理化を図る。
Ⅲ.共通コードの設定。正式には今月の市場協会理事会で可決されてからだが、日本フラワーコードを市場協会会員が率先して使うこととなった。花のEDI化事業も、農林水産省で進められており、それにマッチしたものにすること。仲卸や小売店も、その動きを歓迎しており、産地で一度貼られたバーコードは、業界全体で使えることになる。
Ⅳ.まとまった予約相対品の別送。来年の4月から新市場法により、一部商物分離をすることができる。さらに情報系では「送り状が出来上るのを待っているから出発が遅くなる」という輸送業者が多く、ロジスティック上のネットワーク(今までは商流のネットワークのみ。すなわち卸、経済連、農協。)を、農協、輸送業者、卸のロジスティックと結ぶ必要がある。

産地の送り状をダイレクトに卸売会社に送信し、卸売会社の入力の手間を省く。同様に売立情報をダイレクトに農協に返す。NTTを介在したフローラシステムは仕切情報とし、こちらは気配情報、マーケット情報として農協が取組む。このネットワークを作っていかなければならない。

「品種数が多い」と冒頭で述べたが、これは個々の生産者が勝手に作るのを農協が集荷したためで、品種の絞り込みを花き部会として行うのが普通のビジネスであろう。

このように考えてみると、今まで花き業界にはロジスティックの概念が欠落していたことがわかる。今までは単価が高かったので箱の規格から品種まで、野放図とも言える状況だったが、今後は収益に直接かかわっていくのがこの生産者の出荷経費や農協のハンドリングコスト、卸売会社のハンドリング、ピッキングコスト、仲卸業者のピッキングコストであるので、ここを改善していかないと赤字に転落する農家や、流通業者が出てくる可能性がある。切花ではまあ生産性の高い国の2倍以上の卸売単価を維持しているわけだが、このような価格をいつまでも消費者が許すまい。そうなると、早急に上記のような改善策をどこの卸も取る必要がある。

産地の集出荷所は在庫を持たない倉庫業で、格付と個別生産者への内訳表をプリントアウトする必要がある。卸も在庫を持たない倉庫業で、値段と買主をプリントアウトする必要がある。仲卸も在庫を持たない倉庫業で、買受人番号と値段をプリントアウトする必要がある。小売店は在庫を持つ倉庫業で、販売数と在庫ロスを管理する必要がある。

以上のとおり、分業体制の中でロジスティックシステムをチェーンで結び、その上に商流を乗せることが必要である。動脈がロジスティックシステム、価格情報と金の流れが静脈となる。この改革に、ビジネスとして花き産業に取組もうとするなら、これら2つのシステムを早急に構築しなければならない。




1999/09/20 磯村信夫