増え始めた輸入品と保鮮


為替というと対ドルばかりに目が行ってしまうが、荷を見ていてオランダ、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、台湾などの通貨に対して円が強くなってきていることがわかる。市況が高かった昨年秋よりも入荷が確実に増えているのである。もちろん為替の問題だけではない。

メガコンペティションで、仕事に成果がいつも要求されるようになって、家庭でひと心地つくといった状況が世界中で展開されている。例えば我々のイタリア人感というと、人間的と言おうかそんなに髪を振り乱して働いているなどとは想像だにできないが、実際は本当にハードワーカーである。スペインでもそのようになってきており、世界は大凡その国の景気が良いと、切花の比重が上がり、先進国で0〜2%の経済成長だと園芸ものが売れている。

他の先進諸国に比べ、日本では園芸物の比率がまだ少ないので、今少し園芸が伸びていくトレンドにある。大田花きでの取引現場を見ていると、園芸の楽しさや難しさ、そして労力などを知った生活者が、手軽な切花に回帰していく傾向が見え始めた。特に都市生活者にとって今年の暑かった夏は、ガーデニングをするには覚悟がいるということを思い知らしめたようだ。

この段階で花き業界が解決しなければならない課題は、①家庭で1週間もつ切花を供給すること。②手間のかからない、生命力旺盛な園芸産品を消費者に届けることである。いずれも、種苗から始まって小売店まで花き業界のそれぞれが、自社やパートナーシップを作り、取り組んでいかなければならないのである。

特に当社としては、ロジスティックを最大の課題にしている。最も安く消費者に届けることができる手法は、「キャッシュ&キャリー」である。自分で出向いて代金を払い、自分で持って帰る。もちろん商物分離も結構なことだが、良く言われているコールドチェーン化は嘘であることが多い。チルドの物流センターは、温度コントロールされているが、2、3℃〜7℃までが最適と言われる商品群を取扱う物流センターは、温度管理が徹底していない。まして、花きの共同荷扱所は、平常の取引量と年末や彼岸の需要期との格差は倍以上あり、利益も少ないことから、今後とも投資できる見通しは少ない。こうなると、常温に晒しておくのは何時間まで許せるのか、あるいは真夏なら何℃までは品質劣化を起こさずに、消費者が切花を楽しむことができるのかなど、検証データを取りながらやっていかなければならない。

現在、最も問題になっているのが、産地の集出荷所の温度管理である。常温では、夏は切花が暑過ぎる。冬は鉢物が寒過ぎる。特に日本の夏は亜熱帯になるから、夏場の産地での品質管理、成田、羽田のトラックターミナルでの品質管理が問題になっているのである。




1999/10/18 磯村信夫