花の個人需要とは?


 買い控えと見るか、先送りと見るか、見方の分れるところである。何のことかというと、花の消費現場である。花の需要構造は、業務需要、家庭需要、個人需要の3層からなっている。近年、地味婚、地味葬式などで高級品の花が業務需要だけで使い切れず、家庭需要に回ってきた。何でもそうだが、経費的支出というと、値が張ってしかるべきである。一般消費というとサラリーマンは税金を取られた後の金だから、高くは買えない。だから当然高級品も今までより安くなっていく。

今まで家庭用で使われていた花は、いよいよ今度はいらなくなる。いいものが割安なのだから、それより劣るものはもっと安くなければならないし、今花の需要は生産の伸びよりも劣っているのだから、当然不要とも言える値段になってくる。小生がお取引先の動向をウォッチするに、2日で売切る体制と、「良いもの安く」を自ら課している小売店が伸びていることを発見した。難しいが、これに向けて努力し、場合によっては廃棄も辞さない花店しか伸びていない。

そして今日は、もう一つの商売の可能性についてお話したい。2月に執り行われる総務庁の統計では、切花や鉢物を買っている人は、相変わらずアンケート対象者の半分にも満たない。買っていない半分の人達は、花のある生活は素敵だと知っていても、余裕が出たら買おうと思っているのだから、消費を先送りしている。こうなると今消費してくれている人に、より楽しんでもらうようにすれば良い。先ほど、花の需要構造を業務需要、家庭需要、個人需要と書いたが、電話機でもコンピュータでも、今家庭需要から個人需要に移っていこうとしている。携帯電話、パソコンは一人ずつに付帯するものである。一方、花の個人需要とは、生活空間毎の花を言う。洗面台とトイレの花、子供部屋の花は、それぞれ似合うものが違うのだ。現在はせいぜい居間、仏壇、玄関先のガーデニングの花、これぐらいだろう。これをもっと楽しんでもらおうとしているのだ。

この方向で努力することは、“コンテンツビジネス”と“クロックタイム”というキーワードを思い起こして欲しい。季節の先取りと、珍しい品種、花持ちの良い切花やガーデニング素材を提供することによって、思わず欲しくなってしまうように仕向ける。まず、花好きの人にもっと花を買ってもらう。この人達は花屋さんに行くから、花屋さんはいつも新鮮な品揃えをし、ポップでの説明や対面販売に心がけてもらう。このことにより、花き業界はスムーズに花が流通し、お金が循環する。当面、この作戦が小売店の努力の方向となっているのである。


2000/04/10 磯村信夫