商物分離は難しいものがある


 セリ前取引、セリ取引でクレームがあった花を調査、分析しているが、なかなか特定が難しい。クレームを言う顧客が特定できそうなのと、クレームを起こす産地(出荷者)が特定できたくらいのものである。通常扱うクレームレベルは、咲き具合でも「固過ぎ」や「咲き過ぎ」は受けるが、「やや固い」、「やや咲いている」は受けていない。

草丈の長さや鉢の大きさは規格通りだが、秀・優・良の品質区分に至っては、産地によって本当にまちまちである。A産地にとって、自分の得意先の卸売会社には“良い優品”を出荷するが、量が溢れた時用にお付き合いしている卸売会社には、“良品よりちょっと上の優品”を送ることになる。花は工業製品とは異なり、生き物でしかも栽培と販売の双方が天候の影響を強く受ける商品である。そのため産地の等階級、プラスそこの卸売会社が業界内で位置しているポジションやら買参人の構成による品質の欲求度合によって、その卸売会社が持つイメージに沿って出荷者は出荷し、買参人は仕入に出向く。

こうなると、日頃の取扱商品の信用というものが、ITを使った販売でもとても大切なことが判ってくる。ギャップやモントメリーウォード、サックスなど、Eコマースで成功している流通業者は多い。同様に、日系の花の成功者であるシバタさんのEコマースも優れている。これは品質に裏付けられた価値と価格のバランスを、Eコマースを利用する買い手が値踏みできるからである。Eコマースは中間業者がなくなることではなく、新しいミドルマンが出てくる可能性と期待があり、しかも利益を出すのは至難の技だというのが、現代の共通認識となっている。ツールで写真も見ることができるWEB上の取引は、幼い頃から今まで買い物で何度も騙された経験を持つ我々は、主体が我々買う側にあることを実感する。しかも写真で品質を確かめられ、現物が届いた時にクレームを申し立てることができるが、クレームがあまり多いのではかなわない。よってクレームの少ないであろう品質を売り物にしているサイトで、B2BにせよB2Cにせよ、仲間内のC2Cにせよ、そこで取引をすることになる。

このように考えて行くと、既存の花き業界に卸、仲卸、小売、もちろん産地も含め、早くホームページを開設し、そして自分の大切なお取引先にはネットでも商売ができるようにしていくべきである。また、日頃から扱っている商品のコンテンツを高める努力を惜しんではならない。扱い商品のみならず、情報発信の内容、接客サービス、キャッシュフローなど、その会社の総合的な実態がEコマースを反映させるために欠かせないのである。


2000/04/24 磯村信夫