儀式の花


 土曜日の夜のBSで、宇崎竜童が西アジアやイスラム音楽を得意とするミュージシャン達と組んで、かってのヒット曲をステージで演奏していた。モスレムは10億人以上いると言うが、モスレムの音楽自体はこのところフランスのアルジェリアから移民した子孫や、ドイツでトルコから移民した子孫達が、新しい音楽としてヨーロッパで流行らせている。その影響を受けてアメリカ東海岸でも、少し聴かれるようになってきた。そのBS番組の現代のイスラムポップスに通ずるものがあっただけでなく、レベルが非常に高いので、日本の音楽の幅広さと、人材の豊富さを見せつけた。

モスレムが夏、結婚式をする際に欠かせないのが、チューベローズ、グラジオラス、ストレリチアである。モロッコやアルジェリア、あるいはエジプトなどでお金持ちが結婚する際、ふんだんに花が使われる。今では夏ゆえコスト的にEUに輸出できなくなった花を使うためバラが多いが、それでもチューベローズは香りといい、なんといい、欠かせないアイテムである。夕方から夜を徹して結婚式が行われる。同じチューベローズでも、東南アジアから東アジアにかけては葬式に使われることが多い。もちろん結婚式でも使われているのを見たことがある。

国によって儀式に使われる花はまちまちだが、特に葬式は持ちの良い花が使われている。そのようなことを思いながら今朝会社に出てくると、今までチューベローズといえば静岡、高知県の特産物のように出荷されていたが、沖縄からの出荷が目立ってきた。沖縄は恵まれた天候の中、東南アジアで作られている花を夏に出荷し、暑さにうだるコンクリートジャングルの都市部を、アジアの花で埋め尽して欲しいものである。


2000/07/31 磯村信夫