売ろうとすればするほど売れない理由


 需給バランス以外にもう一つ大切な要因がわかりましたので、ここにお知らせします。

1.売ろうとすればするほど売れなくなる理由
消費者や顧客は、商品やサービスを買う時、その買物を楽しみながらも売り手に対しては、不信感、不快感を抱いているものです。
ここにその事実を裏付ける調査結果があります。
「・・・顧客の不満をいかに把握し、対応するかは少々やっかいな問題である。AT&Tとブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が行った調査結果は、この問題の深刻さを示している。AT&Tの調査によれば、サービスが「よい」と評価している顧客のうちの10%は、同社を再度利用しようとは考えていない。また「よい」と評価している顧客の50%は、態度を決めかねている。言いかえれば、AT&Tのサービスを「よい」と評価している顧客のうち60%が、もっとよいサービスを提供する他業者に逃げてしまう可能性があるのだ。「まあまあ」という評価の顧客では、97%が「次はAT&Tを利用しない」と答えたという。
BAの調査によると、BAを利用した客の1/3が、何らかのトラブルを体験していた。しかし、不満であるとする客の69%が、苦情を申し立ててはいなかった。残りの31%のうち、23%が最寄の従業員に苦情を訴えていたが、その苦情はカスタマー担当部門に届いていなかった。カスタマー担当部門に正式に苦情を訴えていたのは、わずか8%だけである。つまり、苦情として処理され、情報システムにキャッチされていたのは、氷山の一角にすぎなかったのだ。さらに深く分析をしたところ、常連客の9割が多かれ少なかれ問題にぶつかっていた。」(「コーポレートブランド経営」伊藤邦雄著・日本経済新聞社)

2.その対策
売ろう売ろうとするのではなく、消費者(顧客)との関係を改善する努力が、まず必要です。この努力によって、売り手はさらに多く売ることができ、さらに多くの顧客を獲得できるのです。売り手が買い手の本当のニーズを発見し、満足を与えられれば、不信感、不快感が漂う「売り手と買い手の関係」が改善できるのです。

“顧客は誰であれ、売り手に対して不信感、不快感を持っているという事実を認識しよう。そこから商売をはじめよう。”


2000/08/21 磯村信夫