只今のところEビジネスは一物一価ではない


 昨日の日経にも出ていたが、Eコマースは一物一価になるということではなさそうである。当初は経済理論通り、瞬時に見比べることができるので、価格は一物一価に近づき、商品は似てくるとされていた。

しかし大田花きの予約相対取引、相対取引(セリ前取引)のB to B取引を見ていると、7月8月、月を追うごとに同じ人でも定まった価格で買っているとは限らないことが見えてきた。何か実際セリを見ているのと同じようで、高値と安値の差は2割以上もあることが判って、いつになったら終息するのかと思っていた。担当者に聞くと確実に朝5時まで搬出できる産地や、品質が安定していてクレームはもちろんのこと花もちが良い産地のものなど、他の仲卸さんに取られてしまう前に、たとえ高くても押さえておくそうだ。

花は1万5千アイテムあり、日々お取引する荷主さんの数も1,000ではきかないほどあり、仲卸さんが抱えている需要先も、トータルでは細いところまで入れれば2,000を超えなんとしている。こうなると、好き好きや、向き不向きがあり、当然同じ品目でも2割以上の価格差がWEB取引にも出ている。「指値」や「成り行き」など、取引によっても当然異なるが、需要家は人間だし、店の都合もそれぞれ異なるから、当然昨日の日経のように、一物一価などあり得ないのである。

どうも今まで、ビジネスというとニューエコノミーという言葉に代表されるように、何か特別なことのように思っていたが、テクノロジーの進歩により便利さが増しただけで、人間相手の従来のビジネスであることに何ら変わりはないのである。情報がこれだけ氾濫すると、信頼のおける人は誰か、法人は誰かをかぎ分ける嗅覚がより大切になってきた。その意味で「義」という社会的な倫理観を持つことが、自分を利する上で欠かせなくなってきている。


2000/09/04 磯村信夫