海外の花き生産者はどうやって花をお金に換えているか


「Eマーケットプレース」とかいう言葉をよく耳にするようになったが、これもとどつつまりは市場(いちば)のことである。ITが発達し、市場を開設しやすくなったが、市場は市場。信任され繁栄する市場もあれば、そうでない市場もある。特に花のように日保ちせず、品質も天候の影響を受けやすいものだと出荷先である卸売市場は生産者にとって欠かせない。現物を見て売買した方がクレーム処理等の手間を入れると、結局取引コストは安い。海外の花の生産者はどうしているのか。

その一端をお話すると、日本とオランダには卸売市場があり、生産者は市場に持ち込めば例え安くても花がお金に換わる。特に日本はオランダのような農協市場ではないので、どこの市場にも自由に出荷することができる。一方、アメリカなどでは市場がないので生産者が直接販売しなければならない。相手先は問屋や量販店などであるが、少なくとも数量については従来の自分の得意先がどのくらい取ってくれるかを商談し、契約を結ばなくてはならない(勿論委託もあるが手数料で時々もめる)。このようなわけだから、1ヶ月前の出荷情報が90%以下だとすると出荷者の経営が難しくなる。もし足りなかった場合には客先は機会ロスの責任を出荷者に小売価格で請求するし、多かったとしたら事前に価格を下げてでも売り込まなければ取ってくれない。前日や2,3日前に急に多くなったとしても、「急に言われても」と"超安値"で売るか捨てるしか方策はないのだ。だからメーカーとして、播種する150日から90日前の出荷数量・作柄を加味した情報を基にしたセールス、取引先への1ヶ月前の出荷情報は、日本とオランダを除く世界の農産物生産業者にとって欠かせないというわけだ。こういう訳だから、EU各国も東アジアもそれぞれの政府は「セリ市場」は難しいので、相対「卸売市場」を支援しているのだ。僕が卸売会社の人間だからといって、手前勝手な事を言っているのではなく、輸入商社の人がこういうのである。

日本の産地もこれからは、ビジネスプロセスをまず自分の売り先は誰かを決める事から始める。その得意先の需要量に応じて作付けする。もし、事業を拡大したい場合でも先に顧客を見つけてから作付けする。顧客が見つからなかった場合は価格で新規顧客を開拓する必要があるから、当然内部留保が出来ていなくてはならない。このような事も考えなければならなくなってくるのではないだろうか。




2001/08/06 磯村信夫