利は内にあり


社内では仕事を始末と呼んでいる。車にアクセルとブレーキがあるように、仕事の初めと終わりをきちっとすることこそ、品質を高める上で欠かせない。このことは販売と仕入れを特に重要視するとの考え方であるが、生産者にせよ卸売市場を構成する卸・仲卸にせよ、或いは小売店にせよ種苗や荷物が潤沢になり、考えを変える時期になってきている。

花は作れば儲かるとか、花屋を開けば儲かるとか、自分のことについて言えば卸売会社を創れば儲かるという時代は過ぎた。この意味はどの組織にも社長がいて、執行する従業員がいる。組織はあまり変わらないのに、利益を出しているところとそうでないところの格差はますます大きくなっている。これを見ても分かる通り、利益はその事業体の内部に存在しているのである。だから大切なのは販売と集金であり、次に大切なのは効率的に製品やサービスを生み出す内部の仕組みであり、3番目にはパートナーである納入業者との関わりなのである。花き業界でも「ニーズ」という言葉を使い始めて久しいが、大切なのは内部体制である。しかも事業体の内部において個人が存分に能力を発揮している組織こそ利益を確実に生み出しているという事実を花き業界も再考し、リストラをしていく必要がある。

いま、『ザ・ゴール』という小説が30万部も売れ週刊ダイヤモンドでも特集記事が取り上げられていると聞く。「スループット」に意識を集中しながら内部のビジネスプロセスを変えて行くという過程を書いた小説である。今まで限られた競争の枠内にいた生産地や川中の業者は、唯一市場主義経済の中にいた花き小売業界の国際化とともに国の構造改革で国民の意識が変化する中、優勝劣敗の競争にさらされている。遅まきながら、花き業界に位置する各自が内部の構造改革に取り組まなければならない。




2001/09/10 磯村信夫