今為すべき事


年内中は個人消費が停滞するのではないかという見通しが強くなってきた。景気の悪化により失業率が高まってマスコミもその「空気」を察知し、消費が振るわずますますデフレ圧力が強くなる。

しかし同時にITが引き起こしたニューエコノミーは確実に日本でも広がっており、合併やアライアンスが加速する。情報リテラシーによるリバイス問題だけでなく、クリエイティブな人かどうかによって企業は人材を厳しく峻別しようとするから、言われたことしかやらない人は所得を下げていく。

日本経済ではこういう状況が起きていくが、経済は所詮命あってのものだねで豊かになる一手段にしか過ぎない。ユダヤ人は小さい頃お母さんから次のような質問を受ける。
「キリスト教徒が私たちを捕らえに来たらどうする?あなたは何を持って逃げるかしら?」
子供は答える。
「貴金属、お金、通帳、…」
母親は諭す。
「それは違うでしょ。身ひとつで逃げなさい。命があればこれから富は作ることができます。物は過去の結果です。時は未来の賜物なのです。」
このように子供に豊かな生活は自分自身に内在していることと生きている時の大切さを教える。友人のアメリカ人Abeに聞くと今でもアメリカの殆どの家庭でこのことを言って聞かせるという。自分自身の大切さを教えるこの逸話は少し内容を変えて、ハーバード大学の経営学MBAの本でも自分の命の大切さをまず教えるらしい。

テロがあったその週の日曜日に、たまたまBBC2でブレア首相の演説を聞いた。また昨日の朝ブッシュ大統領の一般市民へ呼びかけをCNNで見た。政治家としての強い責任感を体と言葉に表わし、心打つものがあった。アメリカはイギリスとの独立戦争の中で人間を知り尽くしその上に立って民主主義を実現した国であり、それを世界に広める責務があると感じている。それはワシントンにリンカーン像があることで分かる。リンカーンは挫折の連続で選挙にも何回も落選し事業も失敗の連続であったが、最後まで挑戦し続けた人である。下院議員当時、末席の隅っこに座っていた若いリンカーンは議論の終盤に発言を求めて次のように言った。
「正義は力であることを信じよう。信頼の上に立って我々は自分が為し得る仕事の中でベストを尽くそう。その仕事を終結することができたらアメリカ合衆国をひとつの国家だけでなく民主主義の典型にまで昇華せしむるであろう。」"By the people, of the people, for the people"




2001/09/24 磯村信夫