オープンプラットフォームとクローズドプラットフォーム


9月の中旬から安値が続き、産地や小売り店からも悲鳴に似た声が上がる。

過去3年間の10・11月の切り花の単純ケース単価を拾ってみると、4,000円の攻防が11月20日まで続いている。今年は関東地方の梅雨明けが早く、少雨のところが多かったので、現在の作柄は前年並みか前年をやや下回るものと想定される。しかしながら、経済環境とテロにより消費マインドは冷え切っており、99年並みに露地物が反発するとは思われない。よって天皇家のおめでたを前にし、陽気も締まる11月20日くらいまでは4,000円の攻防とみていいように思う。

今年最も天候の影響を受けたのは永年作物で、街路樹や庭木を見ても分かる通り、枯れていたり実成りが悪かったりしているものが多い。こうなると千両や松の作柄が心配だが、産地においては従来通り厳選をお願いしたい。

今日お話ししたいもう一つの話題は、花き小売業界における生産性のアップに卸売市場が寄与しているということである。日本の小売業界はアメリカに比べ生産性が半分と言われているが、パパママストアが多いことがその一因とされている。

オランダの金融会社であるINGベアリングズ社は各国の小売り流通を調査した結果、オープンプラットフォームの卸の必要性を説いている。ベアリングズ社は大手の寡占化が進むと消費者の選択肢が奪われる可能性が高く、提供されるものは必ずしも消費者ニーズに合ったものでなかったり、価格が高めに設定される場合もあるという。その原因は中間流通業者がなくなってしまう為、小売業界において激しい競争が行われなくなってしまい、結果として消費者に不利益だというものである。大手がメーカーと直接取引きをして中間流通機能を相互が行っていたり、日本でもコンビニエンスストアのように特定中間流通者を置き高いパフォーマンスを挙げているところがある。当然これらのプラットフォームそのものはいずれも特定の小売業者の為に働くクローズドプラットフォームである。

一方、日本の卸売市場は社会のインフラと位置づけられ、オープンなプラットフォームである。この一定の条件を満たせば誰でも自分の店に合った産地や商品を調達できる。INGベアリングズ社が言うように、今後ともこのオープンプラットフォームシステムを残し発展をさせていかなければならない。卸売市場のモットーであった不特定多数の産地や不特定多数の買参人という考え方は、ITがこれだけ進歩した現在にあっては時代遅れの考え方である。事実、取引は今までもこれからも特定の小売店が特定の産地の物を好んで買うという日々の繰り返しであり、卸売市場を中心に語るなら出入り自由の特定多数の生産地と、免許が必要だが特定多数の買参人が日々値段は異るものの卸売会社の「場」でお得意様同士の出会いが繰り返している。この開かれた場を卸売会社はITなどを使って社会の進歩に合わせ、より取引の糸を太くして情報の交通量を増やしていく必要がある。

しかし、オープンプラットフォームとしての卸売市場は道路網の整備や小売業の業態変化から、数の調整局面に入ってきている。繰り返しになるが、オープンプラットフォームとは交通量が多くなければオープンの意味がない。だからオープンプラットフォームとしての卸売市場数は日本の国土と人口分布を見た時、一定数に限られるのである。これがオープンプラットフォームとしての卸売市場の社会的ニーズである。では、オープンプラットフォームとしての機能を発揮できない卸売市場はどうすればいいのか。その答えは地場産地からの荷が少ない時期には中間流通としてクローズドの道を選ぶことである。特定の数の限られた産地や仕入れ先と特定の数の限られた小売店との間に立ち、中間流通を行うのである。1990年から2000年の間、イギリスで規制緩和で数の減った職業が多い中、通称「卸」と言われる中間業者が多数派生した。それは特定の小売業の仕入れ代理人としての役割を担う中間流通業者たちであった。

ITが進み、地球がますます狭くなる時にオープンプラットフォームビジネスを任務とする卸売市場数は今後絞られるが、よりクローズドされた卸売市場の存在は地域社会のニーズであることには変わりない。




2001/10/15 磯村信夫