白菊流通の多面化
今日は葬儀社の花祭壇についての話題を提供します。
高齢化社会と共に、需要が見込める葬儀分野への参入はかなり激しくなっていると聞く。電鉄会社が葬祭場を作ったり、ホテルでの葬儀も一般化しつつある。私も昨年から今年にかけて20回以上ホテルでの葬儀に参列した。一方、自宅葬儀はたったの1回だけであった。このように葬儀を執り行うキーマンが戦中戦後生まれであるという葬式が多くなってくると当然会館で行われることが多く、そうなると会館の持ち主である葬儀社が自ら花部門を作るようになる傾向にある。地方に行くほどその傾向が強い。花き部門を運営している人達はかつて通称仕事屋と呼ばれる花店で働いていた人が多いから必然的に地域の花市場で取引をすることが多かった。花き小売店として卸売市場から買っているわけだからこれまでの流通体系と同じだったのである。しかし、この頃はそうでない動きがでてきた。ひとつは卸売市場以外の小さな商社か問屋さん規模の会社の中でかつて花の流通に携わったことのある人達が、国内産地に道を付け直接葬儀社に売り込むスタイルである。葬儀社は出入りの花屋さんを下請け業者として自分で仕入れた花を卸し売りする。それでなくとも花屋さんは葬儀の様々な手伝いをさせられてきているのに、その上に花の仕入れ単価を掌握されてしまったので技術料を頂かなければならないはずだ。しかし力関係からしてそれも難しくなっている。技術料を頂こうと言い出そうものなら、自分でやるからいいよと言われかねない雰囲気だという。国内特定地域と市場外流通業者と葬儀社の繋がりは、多数の国内菊産地と卸売市場と花屋さんの繋がりとそれぞれの経営を単価安で圧迫しつつある。
もうひとつの傾向はこれも葬儀社が中心になっているのだが、現況に至るまでの過程において葬儀の祭壇の花が会館葬になって傷まなくなってきたことである。だから回転が悪い。従って祭壇の納入価格の値下げ競争になる。値下げ競争になったので、中国で作らせていた。いよいよ時代が変わり、祭壇もより花祭壇が多くなって仏具屋は中国に菊を作らせるようになった。その菊を自分たちが祭壇を納入している互助会に納品し、自分たちでしたり納入業者である花店を下請けにして使わせるようになってきている。
現在、葬式花の水面下の状況はこのようになっているが、リクルートでは今年新たにサムデーという雑誌を発刊した。結婚式雑誌のゼクシィはお嫁さんがその本を持ってこういうブーケを作って下さいと花店に行くそうだが、葬式もそれと同じようになるのかもしれない。そうなると花屋さんの腕の見せ所である。これは近未来のことであるにしてもまだそのようにはなっていない。
これらを総合すると、結婚式がそうであったように花のある葬式も二極化していくだろうということである。変化が起こりつつある今「運鈍根」でことにあたりたい。
2001/10/29 磯村信夫