中国


今、社員の葉君が休暇を取り故郷の蘇州に帰っている。日本人女性と結婚し、社内ではロジスティック本部に属し、サプライチェーンのチームで活躍している。彼が休暇を取る前、小生から中国のWTOの取り組み姿勢を調べてきて欲しいと言い、課題を出した。

昨年、中国がWTO加盟した後の戸籍移動の自由化と為替の変動化の可能性について社内で議論をした。その際、彼は2005年までに80%の確率で戸籍移動の自由化が起こり、為替の変動相場は50%の確率で起こるとしていた。(小生も高校生の頃から日中学生友好協会に入り、毛沢東主義の時代にも中国に行った経験より、戸籍移動の自由や為替の変動化は50%以下と考えていた。)

しかし、実際には中国は次の方針を採った。中国には農村戸籍と都市戸籍があって、出稼ぎや一部優秀な大学卒業生などに戸籍を移すことを認めてきた。しかし基本的には両者の移動は認めなかった。しかし、この8月にその制度を5年かけて撤廃していく方針を示した。このことは中国国内の農産物についても生産・流通・販売の一体化を意図するもので、農村部と都市部の一体化の準備と見ていい。

蘇州大学卒業後、都立大学院を出てもうすぐ38歳になろうとしている葉君の同級生が今蘇州の副知事になっている。このことで分かる通り、中国は毛沢東・鄧小平の時代に近代化に乗り遅れたと考えており、90年代に入って政府の役職者に年齢制限を設けた。例えばトップの70歳定年、大臣クラスの65歳定年などである。蘇州のように600万の人口を抱えるところでも、副知事であれば30歳代で就任することも珍しくないし、中小の市であれば30歳代のトップも珍しくない。このように中国はまさにアメリカのようなダイナミズムを持った新興国の体制を整えつつある。今の中国には良いとされていることを貪欲に吸収する力がありそうだ。中国のWTO加盟についてアメリカ人やオランダ人と話していると、彼らは中国のWTO加盟でどのようなチャンスがあるかを考えている。日本は農産物は勿論のこと、一般企業においても自社にどのような悪影響があるかなどとミクロで短期的な面に思いが及んでしまう。足元が脆弱な今の日本経済ではやむを得ないと思う。しかし、もう少しマクロ的に捉える必要があると考える。中国は多大な犠牲を払ってでもWTOに加盟をする。日本の花き業界は都合・不都合ではなく現実の問題として、競争の後に棲み分けていく着地点を仮設し、流通業者も努力していく必要がある。




2001/11/05 磯村信夫