ASEAN


卸売市場業界では、規制緩和施策に伴う手数料の自由化議論が業界紙で報じられる度に話題にのぼっている。例えば手数料の自由化一つとってみてもそれとリンクする出荷奨励金や完納奨励金の問題、農協など各系統の手数料率の問題、買い付けの自由化に伴う受託拒否の問題など検討すべき課題は多く、金融ビッグバンや交通機関の規制緩和施策など、既に行われた自由化と同等の諸問題を抱えている。どの業界でも各社が既に規制に合わせた最適システムを採っているので、新たなルールをどのように定め規制緩和を行うかが重要な問題なのである。

中国に続いて台湾もWTOに加盟する。新聞のトップ面で報じられている事象もASEANの自由貿易圏構想に比べるとショック度もビジネスチャンスも少ないように思う。ASEAN各国は発展ステージがまだばらついているものの、関税をゼロにし、北アフリカのNAFTAのように自由貿易圏を構成しようとしている。そこでASEANに対し日本・台湾・韓国・中国は競争力が劣る産業を配慮しすぎるあまり、自由貿易を拒否するようだと日本の外貨収入はトータルで減るか優良企業が日本から海外に拠点を移してしまいかねない。

日本はシンガポールと自由貿易協定を結んだが、シンガポールは農産物輸出について積極的でないので、手を携えやすかった。しかし、ASEANとなるとアジアの通貨危機以来、農産物輸出にも力を入れており、日本国内の農業問題をどのように調整するかがASEANに対して緊急且つ重大な事項である。日本の切花は既に生活感覚からすると、国際的な単価水準まで落ちてきている。つまり、現在の不況で経済学でいう変化拡大の法則(鞭のように先に行けば行く程、その変動は大きくなる)で、産地・資材業者・種苗会社は大変苦しい状況にある。当社は何とかして採算ベースに合わせようと日々努力しているが、結局は作付けアドバイスまで踏み込むことが欠かせないと感じるようになってきた。

さて話を戻して、外交問題は内政問題であるがASEANの自由貿易協定に対しては日本はこのようにできないだろうか。競争力が強い産業が必要不可欠だが、競争力が劣る産業に一定水準まで面倒をみるという仕組みが欠かせないのではないかと考えている。これは戦後日本が採ってきた施策だが、省庁間でルールを決めるのではなく、政府がアカウンタビリティをきかせて政策決定をすることが望ましいと思われる。非常に早いスピードでこの東アジアでも国を乗り越えた国際化といわれる地域化が進んできている。




2001/11/12 磯村信夫