現金と商品回転率


本業を深掘りするということしかこの不況で生き残る道はないとするマーケットの声が日々強くなってきている。ダイエー再建計画もそれに輪をかけてきている。グローバルエコノミーの世の中で、かつては欧米人のように騎馬民族のリーダーシップが求められていたが、徐々に農耕民族としてのリーダーシップの方がたとえ事業範囲は狭くても持続性のある会社になると言われ始めてきた。本業の中で改善や変革が必要なことは昔から論を待たない。しかし、不況がここにまで至るとリーダーシップのありようはいかにやる気を起こさせるかではなく、いかに部下の邪魔をせずに会社の進むべき道にやる気を集結させるかにかかってきている。そのためにやるべきことは本業の深掘りだから、してはならないことを明確にしておくことが必要だ。モーゼの「十戒」ならぬその戒めが各事業体で必要なのである。

さて、花の商売にはどうも根っからの商人ばかりとはいえない人達が数多くいて、ここのところで商売が縮小均衡化する傾向がある。例えば現金のことだが、小売店は現金売りを半分以上にすれば、余剰金がなくとも仲卸や卸売会社の支払期日までに仕入れ金額を支払うことができる。掛け売りしたとしても市場に支払う期日前に入金があれば銀行から借りなくても支払うことができるし、それを預金することもできる。

仲卸も卸も一緒で産地に支払う前に支払金額を買参人から手にすれば、銀行から借りずにすむ。もし借りた場合、この借入利率如何で卸や仲卸の税引き前利益は殆どなくなり、高い金利で借りているところは赤字に陥る可能性もある。とにかく、営業上の現金の流れは商売をする上で最も大切なことだ。

次に利幅が大切だ。この点に関しては根っからの商人でなくても分かるからあえて言う必要もなかろう。利幅と同様、特に今のこのような世の中では回転率がもっと大切になる。元気な花屋さんは、安くて鮮度の良いものを店先において、店内に足を運ばせているし、人通りの多いところに出店し、この回転率を上げている。切花は月水金が多く、鉢物は火木土の市だとしているが、どちらかしか商いしていない市場はこの回転率は悪いわけだから、デフレの世の中、利益を出すのが大変だ。特にこの回転率で大切なのは、利幅×回転率=利益だということだ。当たり前のことだが、縮小均衡がちな小売店はこの回転率を忘れ、来店されたお客様にお勧めトークもしなくなったところもある。

最後に、今伸びている花屋さんたちにアドバイスをすると、収益を高めつつ店舗拡大を図るということである。特に忘れてはならないのが、現金で急に出店をして帳簿上売上があるのに、お金が回らず黒字倒産ということもあるということだ。これは大口の新しいお客さんを掴んだ仲卸や卸にも言えることだ。




2002/01/14 磯村信夫