適地適産と国力


日本は縦に長くどこの島も背骨に山がある。四季がはっきりしていることが勤勉な国民性を植え付けてきたが、残念ながら必ずしも農業の適地とは言えない。現在供給において価格が最も重要なモノサシとなっているが、生産性をどのように上げていくかがポイントになる。そのためには自分の産地の気象条件に合った品目・品種を作っていくことが不可欠となる。現在出回っている営利用品種は、原産地と育種地の気象条件を内在しているから、例えマーケットでの評価が高いと言っても、試作も何もせずその品種を作ろうというのは危なすぎる。

2005年にASEANがもし予定通り自由貿易圏となったら、当然日本や台湾、中国そして韓国は共に自由貿易圏を構成せざるを得ない。関税撤廃となるため選ばれようとするとオリジナリティと価格、そして安心して使ってもらえるための周年供給体制が勝負の決め手となる。「オリジナリティについてはその地域で育種されたものを限定作付けすること。」「価格は適地適産で生産性をアップし競争力を付ける。」「長期安定供給は出荷時期の異なる他産地との連携を図る。」この3つが必要である。

3つ目の「他産地との連携」の意図するところだが、今銀行も巻き込んで行っているゼネコンの合併とは内容が異なる。これらはツキディデスが言っている「友」や「同盟」との定義からすると、全く身勝手として言いようがない。ツキディデスは「友」や「同盟」について、それは不幸と死を共にする相手のこととしている。よく言われる戦略的同盟−アライアンス−もツキディデスの言う「友」や「同盟」からすると明らかに浮ついている。脇道に逸れたが、国内の産地は共に安定供給すべく「友」を探し、周年出荷でき得る体制を急いで作るべきである。

本日台湾の農林水産省の役人と話をしたが、日本には優秀な種苗会社があり、また農家でも多くの方々が自ら品種改良を手掛けているという話になり、農業や花き流通分野における国の厚みや国力の差を思い、日本のありがたさを噛み締めた。

この国では立地条件を除き不利な点は殆どない。人件費の高さにしても、技術や見識とトレードオフの関係にある。産業を支えるインフラもサポートする機構も十二分に整っている。あとはやるかやらないか、勇気と実行力の問題だけである。




2002/02/25 磯村信夫