中国の競争力は本物


明日、全人代常務委員会の李鵬委員長が来日される。国交30周年を記念してのことだそうだ。前回の全人代を私は注目していた。前々回に江沢民首席や朱首相の退任をほのめかしていたからだ。その退任は内規とも言えるルールにのっとったもので、70歳を過ぎて軍と共産党のポジションは手放さないが、表舞台から退くであろうと専門紙は専ら報じていたからだ。現に、市長(県知事)は毛沢東・鄧小平時代の反省から、定年制の内規を敷き、その通りの年齢構成になっている。30歳代後半から40歳代のナンバーツーが各自治体で権限を持ち、経済的に大躍進させていることは有名だ。マスメディアで報じられているベタ記事を見ていると、こと経済に関する限り、中国はアメリカを手本としているようにしか思えない。

さて、この土日、あまり気の晴れない時間を過ごした。というのも、グローバルエコノミーの中で、勝組に位置づけられている日本の工業といえども、日本に残すことのできる工場は何かと真剣に考えているということを本で読んだからである。日本の競争力のある工場は殆ど組み立てラインからセル(細胞)方式に移行した。これによって需給の変化に応え、仕掛品を少なくし、キャッシュフローを完全しようとして成功している。このセル方式だけでは当然中国に勝てないから、研究開発・設計・原材料・部品調達・物流・販売・マーケティングなどをビジネスプロセスの一環に位置づけ、部分最適ではなく、商売全体の最適化を目指し、コンピューターを通じサプライチェーンを敷こうとしている。当然、花も青果物も部分最適からビジネスプロセス全体を改革し、連動せて生き残りのためのサプライチェーンを敷かなければならないのだが、中国も当然サプライチェーンを敷き、総合力を進歩させてくるであろうから、サプライチェーンを敷いたからといって、競争優位を誇っていられるのは時間の問題だ。それはユニクロ一社がサプライチェーンを敷いていた時期は良かったが、GMS各社も商社と共に中国でサプライチェーンを敷き、すっかりビジネスプロセスでのユニクロの差異はなくなってしまった。そうするとグローバルエコノミーの中で、どのような道が残されているかというと、結局工業で言えば装置産業であり、サービス業で言えばメンテナンス産業だろう。装置産業とはライフラインに関わる産業と、例えばコピーではトナーやら感光紙などである。メンテナンス産業の中に、花や生鮮食料品などが入っていると思う。日本で作ることのできるビジネスチャンスがある業界でよかった。

しかし、問題が無いわけではない。工業で言えば、仕掛品が多いのが花や果物、野菜等の農産物の弱点である。20分の1、30分の1の人件費の差をどのように埋め、競争力を維持するかが問われている。昨日の日経新聞のエコノ探偵団"デパ地下の生鮮なぜ人気?"にあった通り、卸売市場を通す通さないに関わらず、産地は消費者に接訴えるマーケティング活動をするべきである。これで小売価格が10円高くても売れるし、ブランド化に成功すれば更に高くても売れる可能性がある。

輸出を通じ日本に富をもたらしている一流メーカーは、慙愧の念に堪えながら、工場を海外に移転させている。逆輸入のおぼつかない日本の農業は、「神は自ら助く者を助く」で、これから始まる国際競争の中で上記の点を実行しながら棲み分けて欲しい。




2002/04/01 磯村信夫