母の日


関東地方は週間天気予報と異なり、この土日に雨は降らず、今朝買参人の方々の顔を見ていると、充足感に満ちていた。今日の相場も高くはないが、昨年よりも2割ほど良く、セリの流れもよどみない。花は確実に生活の中に根差してきていることが実感できる。

新聞を見ていると、景気の底打ち感が出てきたことを報じている。有り難いことだが、あまり上手くいくと日本は変革ができずに三等国になってしまうのではないかとの危機を覚える。「日本の一人負け」と言われる状態が続いているが、これはグローバリゼイションの中、日本が競争力を高めることが出来ず、敗北したのである。日本と同様に、中国とベトナムを除く殆どの旧共産圏の国々が敗北し、構造改革を叫んでいる。日本と旧共産圏の国々の共通の問題は、アイデンティティに基づく国益が何であるかということを確認せずグローバリゼイションに踏み込まざるを得なかったということである。特に日本は、外面的にはなんら変わったところがない状態だが、アイデンティティや国家感を喪失した中で新しい日本を作らなければならないことが、明治維新や先の大戦後と異なる点で、そこそこ豊かに生活できているので、日本人の得意技である「一丸となってばか力を出す」ことに繋がってこないのだろうと思う。

今年の「母の日」の活況は、JFTDをはじめ花き業界の優良店と言われるところが、こぞって知恵を出し合い、力を合わせて消費者からの信頼を勝ち得たところが大きい。価格帯が下がったから、1件1件の利幅は少ないであろうが、そんな中でもプロの花屋の意地を見せてくれた。今年の母の日商戦を見ると、日本の花き業界が健全な格好で育ってきているのが分かる。それはこういう業態ごとの分業である。新しい花との生活を提案する専門店、時間コストや面倒、照れくささを削減する通販・コンビニ・WWW、セイブマネーする量販店、花のある生活空間を販売するホームセンターの激しい競争の中での棲み分けである。

切花・鉢物類が同時期に集中し、花市場では一年で最も忙しい時期のひとつである「母の日」の取り組み姿勢は、この10年構造改革が行われる日本で、健全な芽が育ちつつあることを我々に教えてくれている。それを受けて、仲卸・卸・内外産地・種苗の4業種は、それぞれの得意分野に合った自己改革を図る必要がある。




2002/05/13 磯村信夫