金融監督庁の不良債権査察


銀行の金融監督庁による債権の査察が終了し、新聞発表にあるように、大手都銀の不良債権額は大幅に膨らんだ。私が知る限り、都銀からお金を借り本社ビルを建てたものの、その後テナントが埋まらず、本業の業績が落ちた花屋さんが「貸し剥がし」(元本の引き上げ)にあっているところが数件ある。いずれも都銀の名立たるところから貸し剥がしにあっているのだから、何やら恐ろしい気がする。既に銀行は自分のものさしではなく、金融監督庁のものさしでしかお金を貸せない。

そして本年度、信用金庫と信用組合に金融監督庁が債権の査察に入る予定らしい。こうなると信用金庫や信用組合は不良債権額を増額せざるを得ないだろうし、貸倒引当金を積み増しするために、資本準備金を取り崩し、自己資本率4%を割るところも出てくるかもしれない。そこで心配なのは、殆どの仲卸・小売店は銀行ではなく信用組合や信用金庫と取り引きをしているという点だ。言うなれば、メインバンクが都銀である会社は本当に稀で、信用金庫と信用組合がメインバンクなのである。この金融監督庁による査察が入ると、金融監督庁によるものさしでお金を貸すから、何件の仲卸や小売店がお金を借入れたままでいられるか甚だ心配だ。当然貸し剥がしが出てくる。花だけではなく、青果や水産など生鮮食料品市場システムに与える金融監督庁による信用金庫・信用組合の不良債権査察の影響はかなりのものになると思われる。そして来年度、金融監督庁は農協の査察を行う予定になっている。農家も牛農家だけでなく、あらゆる農家が苦しい状況だろうから、ここも金融監督庁の基準で貸し出しをするとなると、農事法人を始めかなりの人達がより大変な思いをするようになる。

日本の金融システムが生鮮流通業界に与える影響は、2005年まで続くものと予想されるが、卸売市場の手数料自由化構想と同様の影響が、今期待ったなしで起こると想定しておいた方がよい。




2002/06/03 磯村信夫