卸売市場は会員制クラブ


先週の土曜日の株主総会で、株主であり買参人でもある方から場内の交通混雑についての質問があった。本来株主総会とは、商法上の目的である審議事項に関して質問を受けるのであるが、今回は議案承認後、敢えてコミュニケーションを図り、当社の考えを理解していただこうと質問をお受けした。そこで申し上げたのは、花市場を運営する卸売会社は、会員制クラブを運営する事業体であるということであった。会員制クラブであるから、当然にそこを利用するそれぞれが、クラブをより良いものにしようと最善を期することがメンバーである条件となる。この会員制クラブは自己完結型ではなく、買参人を通じて、広く一般社会と繋がっている。

さて、花市場は会員制クラブなので、場内の取引ルールは無論のこと、駐車の仕方やゴミ処理のマナーについても、当然メンバーとして自覚してもらう必要があるのである。ご質問くださったその方は、当社を応援してくださっており、一般論としてご質問いただいたが、この方のように一般の買参人もあるいは仲卸さんで買う買出人(準会員)も、自分達のクラブを良くしていこうとする気持ちを持って頂きたい。

アメリカでは花を買う場所のトップにスーパーマーケットが躍り出た。売上金額が年間5%ずつ伸びているという。これは専門店が新しい花との生活を消費者に提案することを怠ったためではないかと考えている。日本がそうなるかどうか判らないが、元気な商店街の数が少なくなっているのも事実である。
イギリスで、テスコをはじめスーパーマーケットの花の販売額増の理由は、ここ1,2年で1,000から2,000円代の手軽な花束ギフトが伸びているためだ。現在日本は、物日のパターン化された花や家庭内需要の花についてはスーパーマーケットなどを利用する消費者が多くなってきているが、専門店が確実にお値打ち品を消費者に届けているから、消費者の花店への期待は大きい。しかし、日本でも量販店は勉強している。花束加工業者はホームユースから手軽なギフトへと商品のラインナップを揃えようとしている。消費者に選ばれる者が生き残ることを許されるのだ。

全ての国の花き業界が健全に発展していくためには、新しい花を評価する専門店が活躍することが必要である。育種業者や生産者と同様、専門店こそ、その国の花き産業をより一層を引っ張っていく立役者である。そしてこの日本で専門店が活躍するためには、家族で経営していても一向に構わないが、専門店というカテゴリーの花店を経営していくという事業家の目線を持ち、経営者としての心構えを持って行動していくことが必要である。そうすれば、株主総会で憂慮されていたような無秩序な場内交通混雑に対する懸念などないだろうし、小売業界において産業人の手本となり得ると思われる。




2002/06/24 磯村信夫