花きロジスティック、3つの無駄をなくそう


5日の金曜日、久方ぶりにニューヨーク株式市場は上げた。それまでは、エンロンをはじめ代表される大手企業の不祥事に投資家から愛想を尽かされ、じりじりと下げていた。しかし、金曜日の上げ相場は長く続かないとの見通しが専らだ。その理由として①アメリカに世界の金が集まらなくなりつつあること②株主資本主義の是正の力が働いていることが挙げられている。

②の株主資本主義の是正についての考え方だが、そもそも資本主義には会社は株主のものとする短期利益追求型のアメリカ資本主義、社会を良くすることに力点を置いた第3の道を歩もうとするEUの社会重視型資本主義、中長期の繁栄を願い、ステークホルダーの中で社員を最も重視する日本型の人的資本主義(今、日本は1980年代、人を大切にしていたIBMが解雇に踏み切ったのと同様の動きを見せているが。)の3つがある。アメリカは余りにも時価総額とキャッシュフローを意識しすぎているように思われる。その点、日本型を貫いているトヨタを例に挙げると、世界のシェア10%を占めるに至り、ここ10年間、戦後のベビーブーマーの高齢化に伴い、もう一度仕事を見つめ直し、時代に合った能力を高めるべく、社内改革を行ってきた。人を切るのではなく、このような時代の要請があるから社員一人ひとりが変わっていこうというチャレンジをしていたのである。そして20世紀末、グローリゼーションの中でのトヨタの社員の期待される能力とはなにか、この課題に向けてそれぞれ自己変革し、希望退職を募ることなく、それを成し遂げた。

話は変わるが、トヨタというと副社長であった大野耐一氏が作り上げたジャストインタイムが有名である。彼の弟子の山田日登志氏は、日本の製造業のコンサルタントをしていて、徹底的に無駄を排除することによって、人が備わっている能力を全開させ、働く喜びを与えて中国とのコスト競争に勝とうとしている。山田氏の視点は3つある。1つは停滞の無駄(仕掛かり品など)、2つ目は運搬の無駄、3つ目は動作の無駄である。製造業の場合、ラインからチームや個人での屋台方式を生み出したわけだが、これを当社に置き換えると、例えば今日の商品の入荷遅延、それに伴う搬出遅延を見ると、如何に花き物流業界が上記3つの改善業務をなおざりにしているか、私ども大田花きも含め深く反省させられるのである。

人がやりがいのある仕事とは、その仕事が意味あるものでなければならない。意味ある仕事を成し遂げることによって、賞賛に価する仕事となり、評価を受け自尊の念も生まれる。もし、日本流の経営が人を大切にすることであれば、花き業界のそれぞれが厳しく3つの無駄を排除し、各自の業務を改善するとともに、サプライチェーンとして全体最適を生み出すため、相互に協力し合わなければならないのである。その為に必要なのが、ロジスティック(EDIと物流)改革である。




2002/07/08 磯村信夫