シンギュラー・ポイント


オーストラリアでの超音速機実験の失敗にしても、最近多発している衝動的な殺人事件にしても、日本社会がシンギュラーポイントに向かっているのではないかと不安にかられる事件が多く発生している。

シンギュラー・ポイントとは、水であれば沸騰点や氷結点のことをいう。徐々に徐々に加熱され、100度に達した時点で水は煮えたぎり、水蒸気となる。シンギュラー・ポイントを過ぎた時点で、誰の目にも明らかになるが、こうなってしまうと、火を消しても、水を注ぎ足しても暫くは手の付けられない状態が続く。

この現象は、企業にも起こりうることで、組織のリーダーは常に会社で起こるあらゆる事象に対して、「会社がよくなっていくのか」「悪くなっていくのか」の点からチェックし、その都度評価を行い、適切な手を打っていくことが重要な役割である。

今、花き流通業界でも、仲卸や卸の2割以上が赤字となっている。1割であれば経営が悪いのでさもあらんと、その経営者のせいにできるが、2割を超えるとなると現在の卸売市場の流通のやり方に問題があり、シンギュラー・ポイントに向かっていると判断して良い。単価の下落から、週3回しか市が立たない卸売会社は、シンギュラー・ポイントを超そうとしているのかもしれない。

この国のあらゆる人にとって大切なことは、この国自体がシンギュラー・ポイントに向かっていると気づくことである。それを回避するためには、社会や組織体で長になっている者が、責任を取る気概を持つこと。そして、ニューヨークの地下鉄から始まった街の浄化作戦「壊れた窓補修作戦」のように、徹底して5Sを行うことである。浄土真宗や日本の軍隊が5Sを以って、人の基本的な務めとしてきたように。

※5S——整理・整頓・清掃・清潔・躾




2002/07/22 磯村信夫