花もデフレ継続か


政府のデフレ対策が成功することを切に希望している。冒頭からこんなことを言うのは、秋の彼岸が終わってから切花・鉢物の単価が下がり続けているからである。今年度の相場は4月から大きく崩れることはなく、悪いときでも前年並、旧盆から彼岸にかけては高相場を維持していた。切花に比べ不調だった鉢物も9月に入りようやく持ち直してきたところであった。

株価の下落は8月末に一万円台を割ってから下がり続けている。これまでは株価が下落しても足元の実態経済にすぐに影響することはなく、半年から9ヶ月先に現れる影響に対処していれば良かった。しかし、最近では株価の下落が消費マインドの冷え込みに直結する。花も例外ではない。小売の場面でも上半期は前年を上回る実績を残した店舗が多いようだが、10月に入り不振に転じたようだ。

たしかに毎年この時期は気温が下がり花保ちが良くなるため、消費者の購入回数が減る。小売店においても廃棄ロス率が低下するのは良いことだが店に花が残るため、仕入れ回数、仕入れ量が減少し、相場は低調になることが多い。しかし今年はそれに加えてデフレが継続している状況であり、小売の場面では価格帯のパフォーマンスが近隣の店よりも低いと作りの良いものでも売れない。そうなると小売店では消費者の良く知る定番の花の価格を抑え、新しい花、珍しい花などで消費者の目を引こうとする。従って、このままデフレが続けば、小売店の仕入れ方法は仲卸で多品種を少量で購入する取引が多くなる。また売りやすいという状況に対応するため、卸が扱うケース当たりの入り本数が少なくなったり、複数の品種が混在するミックスなどで出荷する産地が増える。要するに、流通段階でもデフレに対応しているのだ。

花は「三気商売」といわれ、天気による需給バランス、景気、そして我々花に携わる者のやる気によって活発になったり不活発になったりする。今年の花の生産量はほぼ前年並であるから天気によって需給バランスがタイトになったり過剰になったりする。そして景気が悪いため小売店では物日にしか売れないという状況に陥っていくと思われる。あとは我々のやる気だけである。




2002/10/28 磯村信夫