生き残る課題と3つの品質


 この週末に2つの結婚式にお招きいただいた。土曜日には東北の生産者のご子息、日曜日には「ナルシス会」という専門店の二世、三世の方たちとの勉強会の幹事長をしている方の披露宴であった。双方とも仲人をたてない時流の宴であり、メインテーブルも半分であったものの、さすがに花き業界に携わる方の披露宴だけあって、花をふんだんに使った華やかな雰囲気であった。おめでたい席だからかもしれないが、出席した方々は皆ふっきれたような会話を交わしていた。困難な課題はいつの世にもあることだし、それを克服した暁には、きっといいことがあると確信しているようだった。前進に次ぐ前進という訳にはいかないが、どうにかして生き残ってみせるという意欲を覗かせた前向きな発言であった。

花き業界の現在の隘路は、あまりにも花を売ろうと意識しすぎることだ。目先の利益だけに注目するのではなく、もっと楽しい生活を提案すること——花き業界であれば花のある楽しい生活を消費者に提案すること——に努めるべきではないか。このために取り組むべき課題は、改めて品質を3つに整理して考えることである。「3つの品質」については以前にも書いたが、今まさにその総合力が問われている。(1)商品品質:外観と中身、(2)マーケット品質あるいは市場品質:取引コストのパフォーマンスに優れていること、(3)社会的品質:国や業界に役立つこと、メタフィジックスの真・善・美の具現、環境問題、農薬問題。この「3つの品質」を総合的に向上させ、バランスをとることが大事である。

大田花きは、前述の結婚披露宴に集まっていた方々も含めた花き業界全体に対して、改善意欲を持った提案を行っていく必要性があることを感じた。花保ち・鮮度・咲ききる保証も大切だし、デフレ圧力の中、流通コストの削減も必要である。各事業体が自ら社会的品質を磨くことも欠かせない。なぜなら、この国で仕事をさせてもらっているのだから。




2002/11/04 磯村信夫