2007年の準備


高知市三里のグロリオサがオランダで高い評価を受けた。10月まで開催されていたフロリアード2002のコンテストにおいて金賞(その他切花部門)を受賞したとのことである。なんともすばらしいことではないか。花き業界はご多分にもれず不景気の影響を大きく受けているが、勇気を持って挑戦なさった三里の方々にお祝い申し上げるとともに、敬意を表したい。

さて、今週の『日経ビジネス』に団塊の世代が2007年頃から定年を迎えることについての記事が載っていた。定年後の団塊の世代というのは顧客としての最大のボリュームゾーンになることが予想されるため、この世代に受け入れられるかどうかがビジネスを左右すると言っても過言ではない。以前にもこの欄で丸の内から有楽町にかけての地域や南青山などの大人の雰囲気を持つスポットに注目したことがあるが、これらの地域はこの消費の変化を予測し街のあり方を変えてきたといえるだろう。

また一方で、2007年頃はASEANを始めインドまで含めた東アジアから農産物が関税ゼロで入り始めている可能性が高いという点にも注目したい。ASEANについては、中国が2003年に自由貿易協定を批准し、遅くても2005年には実行されると考えられるし、それを受けてインドが交渉を始めるに至った。残念ながら日本は中国、インドに大きく遅れをとっており、ようやく来年から交渉を始めるという。これでは日本の農業は国際競争をして強くなろうという意識が欠けているのではないかと指摘されても当然であり、実際に先週ヨーロッパで行われたWTOの農業問題に関する委員会でも言及された。

果たして日本の農産物は本当に国際競争力を持っていないのだろうか。花に関していえば、冒頭の三里のグロリオサのように世界のトップレベルに位置する商品品質を作り上げている。しかし、敢えて言えば「市場品質」に弱点がある。つまり安定出荷や適切なロジスティックス、事前の情報、価格競争力などの面で、国際競争力に耐えられるかどうか不安が残る産地が半分ほどあるのではと考えている。2007年頃の諸外国から輸入される花は、季節要因で日本にない時に輸入されるものだけではなく、菊・バラ・カーネーションの三大品目などは大量販売される商品として徹底したコストダウンを図り、生産されるものが大幅に増加するであろうことは簡単に予想できる。国際競争力を計る上での価値基準が違うのである。

しかし、日本国内の消費展望について言えば、生鮮食料品に関するアンケートでは「どこで生産されたものを買うか」という問いに対して消費者は地元県産あるいは近隣の県産のものを選ぶという割合が圧倒的である。また、花では豊かな団塊の世代が好むのは一本一本、一鉢一鉢の品質が優れた良いものであろう。周囲、つまり日本を取り巻く国々の状況には敏感でなければならないが、日本国民が本当に欲しているものを供給することはより大切である。主に地元や近隣地域の花を販売する地方の卸売市場はこの点を重視しなければならないと思うし、事実そうなさっていると思う。同時に地元産地の育成にも励むこと。国産品を特別扱いするとか国際競争を無視するとかではなく、確固たる価値観を作ること。それが団塊の世代受け入れられるキーワードではないだろうか。




2002/11/11 磯村信夫