ASEAN出張で思ったこと


ASEANの自由貿易協定が実行され、日本が参加するであろう2007、8年を読むために、11月末から先週半ばまでアジア諸国の首都やいくつかの花の産地を訪れた。
雲南省昆明では12月18日にKIFA(昆明インターナショナルフラワーオークション)の営業が開始される予定になっている。この雲南地域は花きの一大産地であり、市場の開業により輸出をにらんだ花き産業がアジアでも第一歩を踏み出すことになる。KIFAではオランダのアールスメール市場に職員を派遣し、行政府や雲南航空などからの出資を仰ぎ、基盤は磐石である。ASEAN地域には他にもタイ・ミャンマー・ラオスにまたがる「ゴールデントライアングル」と呼ばれる地域があり、花の栽培に適した土地だと言われている。まだ本格的に産業として始まってはいないが、雲南地域と並ぶASEANの資産と言えるだろう。

どこの国でも、たとえアメリカといえども、新しい産業を興すには国家プロジェクトを組み、それを民営化させ、経済が発展していくスタイルは普遍である。国際競争力のある産業に仕立てるためには、政治の強いリーダーシップが欠かせない。このような形で韓国は1995年から、中国特に雲南省では2000年から花き産業を振興してきた。

ASEAN諸国には他にも着目すべき点が多くある。昆明地区の花き産業には台湾の大企業やシンガポールの企業なども参入しているし、オランダやイスラエルの農業関係の企業も投資し基盤整備に勤しんでいる。カーネーションとバラに輸出余力もある。我々花き産業人は、絶えず雲南省の花き産業の動向には気を配らなければならない。
マレーシアのキャメロンハイランドも有力な花き生産地域になり得る。キャメロンハイランドは既にスプレーギク生産においては国際競争力を持っている。品質は大変良く、オランダ系の品種を見てもフォーメーションやステムの固さなど、技術はもちろんだが土壌も適していることを感じさせる。
同じくマレーシアでは、ジョホールバールのランや観葉植物園は中国系シンガポール人による経営で輸出をしている。上質のデンファレが日本にも輸出されている。また、タイ、特にバンコク周辺には輸出に主眼を置いたデンファレの大規模農場がある。ランの先進国地域として育種をしており、沖縄県で栽培されている品種はタイで品種改良されたものがほとんどである。

いつもASEAN諸国を訪問する際に心がけていることは、第二次世界大戦で日本が犯した罪を自覚してそれぞれの国の人々と接することである。同じ敗戦国でもドイツと日本の違いは「罪の文化」と「恥の文化」の違いだと言われる。日本の若者は昔のことだから関係ないと思っているかもしれないが、特にアジア諸国の人々とコミュニケーションをとる上では「罪」は十分に自覚することが必要である。そしてもう一点、アジアの殆どの国は多民族国家であるので、国をまとめていく上で強い政治力が欠かせない。経済もこの政治力の下にあるのだということも認識しておく必要があるだろう。

今回訪れた中国、ミャンマー、タイ、マレーシアの国々では国家間でもお互い言うべきことは率直に言い合い、競争した後で棲み分ける。そして相互にメリットを享受する。最初からの棲み分けなどはあり得ないと小生は思っている。当社でも折をみてお取引先さまと具体的な意見交換の場を持ちたいと考えている。




2002/12/09 磯村信夫