選択と集中


種苗会社の方から、「こんなに色々な品種を少しずつ出荷されたら、大変でしょうね」とため息交じりに質問された。今は高値が出にくい時期なので、生産者はできるだけ多くの品種を作って、目先を変えながらリスク回避を図っている。生産者がそうしたい気持ちはよくわかる。しかし、その人しか作っていない品種や本当に稀少価値のある品種などはそうあるわけではなく、まして消費者に受け入れられるのも今は難しい状況だ。結局はAさんもそうならBさんも同じとなんとなくその品目の何でも屋さんが多くなってしまい、いたずらに品種が多くなっている。これでは種苗を売る方も大変だろうし、流通の各段階で手間がかかることになる。

世はまさに選択と集中の時代。つまり得意領域の選択と経営資源の集中であり、これしか深掘りがきいて(プロフェッショナルになれて)しかも良いもの(サービス)を安く提供する手立てがない。花の場合は生産物のスクラップアンドビルドが徹底されていないので、品種数は増えるばかりになっている。
産業か家業かの問題もあろうが、オランダに比べるとあまりにも手工業的である。

切花の買い手は専門店である町の小売店、専門店のチェーン店、量販店、そして量販店に納品する花束加工業者に分けられる。そのうちの元気な専門店のチェーン店、量販店と花束加工業者は、同一品種で口数の多いものを買う。これで分かるとおり、生産者は売れ筋の品種に絞り込めた人が勝つ。もちろん種苗会社も同様である。好みが多様化しているといっても、一人が多種多様なものを買うのではない。その人は安定的に同じ好みを繰り返し消費しているのだ。だから、利益を上げるためには、思い切って生産の合理性を図るために品種を絞らなければならないのである。生産性が上がった分だけ、生産者の手取りが増える。




2003/03/17 磯村信夫