制約条件を強化する


 あらゆるカテゴリーにおいてトレーサビリティが不可欠になってきている。BSEに始まり、残留農薬や無登録農薬問題などで今まで放置してきたものが一挙に噴き出し、消費者の声を受け、食の安全を確保する気運が流通業者の間で高まってきた。もちろん花も同様で、アレルギーやアトピー体質の人がこれだけ多くなると、花き流通とて細心の注意を払っておかなければならない。先週の新聞では、大手小売流通グループが販売責任者としてこの問題に注力し、取引慣行まで含め一刻でも早く改善していくことを報じていた。そうなると、大手小売業はトレーサビリティが確保できる産地との取引を志向しているから、選択肢として中抜き取引が拡大する可能性が考えられ、卸売市場業者や系統出荷団体も対応を迫られることになる。

ではなぜ今まで「顔の見える農産物」と言いながら、この対応が後手に回っていたのであろうか。原因として未だに右肩上がりの成長期の出荷販売方式を取っているところが多いからではないか。天災等のリスク回避もあろうが、多数の卸売会社に出荷する産地にとって、販売先のA卸売会社は重要だが、その他大勢のうちの1つに過ぎない。また、A卸売会社にとって、その産地は重要だが、その他大勢のうちの1つに過ぎない。しかし、この考えの通りに自分のことだけを考え利益が得られるのは、マーケットが成長段階にあるときだけなのだ。現状のような成熟段階に入り競争がより激しい時は、サプライチェーンの縦の連帯、同業者間の横の連帯(アライアンス)を強くしていき、また、現在の時代は業者間の淘汰、すなわち横のつながりで合併などの数の調整が行われているので、生き残るためには縦の連帯、サプライチェーンを取引先と結ぶ必要がある。実は、この取組みが生鮮食料品花き業界において遅れているのだ。これからはサプライチェーンの連帯を持ち、当然自分をその他多数のうちの1人と規定せずに、トレーサビリティについても面倒なことなどと思わず、メーカーとして当然しなくてはならないことをする、或いは今まで怠ってきたことをすると考えることが重要である。制約条件や不確実性を排除していかないとトレーサビリティができない。出荷団体にせよ、卸売市場にせよ、大型小売店にせよ、当然取引先の絞込みとサプライチェーンを敷き、トレーサビリティをそれぞれの立場で行い、仕事のやり方を顧客主義、消費者本位に変えていかなければならない。




2003/03/24 磯村信夫