質・コスト・納期


監督者は人を管理するのではなく、仕事の進捗状況を管理するのだと、ソニーの創業者盛田氏から学んだ。花き業界の仕事は遅々として進んでいない。

生鮮食料品花きの生産から卸売市場までの行政は、今まで出口の平等にポイントを置いていた。ベルリンの壁崩壊後、当時のGATT(現WHO)を国際貿易を促進する上で各国が批准し始めたという動きの中、日本に関しては90年代を通して出口の平等に拘った。その結果、コスト積み上げ方式の価格設定に何ら疑問を感じずに今まできてしまった。しかし、大店法の撤廃とともに、小売業界は社会主義的政策から、資本主義の努力した人が報われるという構造に変わり、花き業界も買い手が安く買おうとするからようやくコストの削減をせざるを得なくなってきた。コストを削減するということは、明日への投資のための利益を捻出するということであり、自己の存続のためである。

この4月の上中旬は天候にも恵まれず、景気が良かった昨年との対比で2桁以上の売上減が続いている。これは週末の天気の悪さもあるが、結婚式の組数が少なくなっているからだ。また、UFJ総研によると今期ボーナスの平均支給額の減少が続き、同時に健康保険料の徴収システムが変わるので、ボーナスの手取りは10%以上も減る。そうなると生鮮食料品の位置付けは、手前から野菜、その向こうに果物、その少し向こうに花となるから、経営をしていく上では、少なくとも1割以上単価が下がることを想定する必要がある。

我々のお客様は消費者でもあり、消費者に花を届ける買参人でもあるから、この両顧客の大半が力を落としているところに価格が下がる要因がある。先に触れたように、利潤を得るために、否が応でもコストダウンを図らなければならないわけだが、どのようなやり方があるのか。

一般論でいえば、横の連帯で購入サービスをスケールメリットによってより安く買う。労働生産性を上げたり、施設内の回転を上げたりする。大衆受けする新商品を出す。縦の連帯で協業によって前仕事、後仕事の合理化を図り、安く売っても儲かる仕組みを作り上げる。例えば、運送店と協業した場合は、その運送店にとって何時に産地を出発し、何時に卸売会社に到着すれば、復路で商品を積んで帰ることができるから、運賃をいくらまで落とせるという協業であったり、パレット輸送をすることにより、卸での荷卸時間を5分の1に削減できるから、運転手の就労時間が短くなり、コストを削減できるとか、ひとつひとつを経済効率の視点から見直して協業する。

花き業界の仕事を遅々としないためにも、自分勝手なコストダウンは意味がない。顧客に役に立たなければ、自分が優先的に選んでもらえなければ、コストダウンしても意味がない。仕事は人の役に立つことに意義があるのだ。そうなると、事業を存続させるためには、買い手に合わせて質・コスト・納期の3つを改善していくことが欠かせない時代となっているのである。




2003/04/21 磯村信夫