自然界の秩序をエコノミーと訳す


リチャード.A.フォーティ(古生物学者)の『生命40億年全史』のカンブリア紀のページで、「エコノミー」を「秩序」と訳していた。つまり、「エコノミー」を植物連鎖・適者生存の新しい秩序の意味で訳していたのである。翻訳者は渡辺政隆氏で、“目からうろこ”の翻訳であった。

この頃科学の記事を読むと、人間が万物の霊長であるという尊大な見解は一切ない。思うに植物は葉緑体で自立して生きているが、動物は自分の生命を植物に依存している。そしてより大きな動物は植物を食べる動物に自分の命を依存しているのだ。つまり、依存しているものを強者と呼べるか、というのである。
この見識は人間社会の強者、国でいえば唯一の超大国アメリカを考える上で、新しい依存関係を見てとれる。どういうわけか、地球上の生物は、より大きくなる欲望を持っている。大きくなればなるほど、その生命維持のため、依存関係はより広範囲になる。多分、この依存関係を共生というのであろう。
経済を意味するエコノミーを「秩序のあり方」と捉えると、適者となるより大きい企業体は、多数のお取引先と共生し、消費者とも共生していく必要がある。リチャード.A.フォーティが言う激しい競争がこの世に出現したカンブリア紀以来、地球はこの秩序であるエコノミーに従って、時を刻んでいる。




2003/04/28 磯村信夫