第13回大田花き薔薇会議


23日の土曜日、第13回大田花き薔薇会議が開催された。農業新聞にも紹介されていた通り、花の消費は底を打ったと判断している。薔薇会議ではそれ以外に重要なことを2つお話したので、本日小欄ではそのエッセンスをお知らせします。

その①
一つは変化の対応についてです。食物連鎖で人類が最上位に位置できたのは、結局競争に打ち勝ってきたからです。困難な状況を克服し、イノベーションを生み出し、ここまでやってきました。従って、人類は変化を好み状況を克服していくことは、運命の定めるところです。1990年代社会の枠組みがすっかり変わってしまったのに、日本は過去の成功体験から脱することが出来ず、混迷を極めました。混迷期の10年を経た今でも、フリーターでも十分やっていけるし、職種を問わなければ食うのにも困らないほど余裕のある社会が続いています。しかし、既に変革した人や企業もかなり多くなってきました。
今まで「アオムシは大きくなってもアオムシだ。何ら機能は変わらない。思い切って蝶にならなければならない。」と以前を捨て、新しい機能を持って世に飛び出したのです。その人たちやその会社の努力がようやく目に見える形で出てきたのが、昨年の下半期から今期にかけてです。個人名や会社名が同じでもやり方や機能が違う。こういったところが生存競争に打ち勝っています。ですから、我々もアオムシのまま、あるいはサナギのままでいるのではなく、思い切って違った機能を身につけ生存競争にかけていくことが花き業界の発展のためには欠かせないのです。現存の産業界のように、元気な会社が一割出始めると、後に次いで続々と元気なところが出てきます。新しい方向性を打ち出すときに必要なのは志です。自分の農場や会社は何をすべきなのか、自分は何によって人生を全うしていこうとしているのか、この志が必要だと私は考えています。そして、それも本当のことですが、正直を言ってしまえば、私はただ単に市場の仕事が好きなのです。

その②
花き業界のレーゾンデートル(存在意義)は、都市生活で使いすぎた交感神経を緩め、副交感神経を活性化させて精神と身体のバランスを健康的に保つところにあります。殆ど森で生活していた人類は、人工物であふれた都市では緊張が高まり、ストレスが解消されにくい状況にあります。そのような中にあって、ストレスを軽減させるには、日々小さな幸せをコツコツと貯金して過ごすことです。睡眠と同様、幸せは貯蓄できませんが、足りないときに補うことはできます。ですから、できれば毎日ちょっとおいしいものを食べたり、散歩したり、身近なところに花や緑を置いて品位のある生活を心がけていくと、ストレスに耐え得る精神や肉体を作っていくことができます。気分転換が上手い人はおしゃれと同様に小物を上手く使っています。都市空間の花や緑の空間、家の周りや家の中、居間や仏壇、トイレ、そしてオフィスなど、花や緑を上手に使って健やかに過ごせるようにすること。嬉しいとき、悲しいとき、人生の通過儀式や記念日に花を贈ってプラスの感情を引き出すこと。これが花き業界の役割です。
我々花き業界は今まであまりにも花を売ろうとしすぎていました。大切なのは日本国民一人ひとりの暮し向き、その人の人生です。ここに焦点を当てて、マーケティング活動をしていく必要があると薔薇会でお話しました。




2003/08/25 磯村信夫