経済圏は州道制


関東地方はすっかり秋めいた昨日の日曜日、大学生はまだ夏休みということもあり、お台場は最後の夏休みを楽しむ人たちで賑わっていた。いつのまにかイベント広場の筋向いにコンビニのサンクスができていて、僕が知る限りではこれでお台場にも3つのコンビニができたことになる。コンビニができると生活感がぐっと増して、この地域の物価が沈静化するようで、なんとなくほっとしている。
お台場もそうだが、東京では大規模な街づくりが各所で行われている。マスメディアでも紹介されるから、ご存知の方も多いと思うが、なんといっても驚かされるのが道路の幅が広がっていることである。90年代には列島改造論の延長で地方の公共投資はそれまでの10年の1.7倍になった。一方、東京は0.6倍と80年代よりも少なくなっていたから東京は住みにくい街だった。それが予定した通り、2000年からわれわれ都民にも目に見える形となって改造が始まった。あたかも彼の功績のように感じてしまうし、都の役人の「東京都から日本を元気にする」という意気込みの変わり方を私は肌を持って感じていたので、まさに東京が良くなってくるのではないかという予感があった。だから改めて東京の街を歩くと、なかなかどうして、既に最悪期は脱したと実感できる。東京といっても首都圏メガロポリスという感じの方がむしろしっくりくる。都心部から半径50キロ圏内の厚木、相模原、八王子、横田、青梅、入間、川越、筑波、成田、木更津の範囲の人たちは、それぞれの住まいにしている行政上の県なぞ気にせず生活している。JRにしても、私鉄にしても、そして地下鉄にしても、相互乗り入れがこれだけ活発だから、県をまたぐというような感覚は私どもにはない。いつもこの半径50キロ圏内、1日で無理がなく活動できる空間で物事を考えるようになってきているのである。そこに我々花の卸売業者や小売業者の難しさもある。

六本木のルイ・ヴィトンがオープンし、小売店を通じてそこに使われる花の納品があったが、実際に見るとなかなか凝った味わい深いデザインだった。この花はこう使うとさすがにルイ・ヴィトンのお眼鏡に適うのかと感心させられる。この商品のクロックタイム(ライフサイクル)を実際の商売で感じることができるので、社内にその感性やノウハウなどが蓄積される。そうなると、数年後私の住む大森近辺やら地方都市にもその感性や花あしらいが受け入れられていくようになっていくから、当然大衆化される。
実質日本は、既に州道制に近い経済圏になっている。それ故、日本花き卸売市場協会でも支所単位での話し合いを活発化すべく、助成を行っているが、いま一歩踏み込んでそれぞれの卸売会社の機能を見極めた上で、協業をしていくことが強く求められている。自民党総裁選の論点は「小泉さんは大企業ばかり」だそうだが、大企業でも日立や東芝のように日本を代表する企業も国際競争の中で未だにあえいでいる。ゼネコンにしてもそうであるから、大企業から元気になっていくという施策は広い意味での国の資産活用という観点から理解できる。しかし、そればかりではこの国はおぼつかないのは言うまでもない。これは、花き業界においても同様で、飽きられた花や余った花だけを売るために20億円以下の卸売会社や3,000万円未満の小売店があるわけではない。取扱額が少ないのは、対象顧客数が少ないだけで、消費者に喜ばれる花を取り揃え、営業をしていくことが卸や小売りの本来の使命であることは、変わりない。これができれば花のデフレをストップさせることに繋がる。

昨日東京の街を車で移動しながら、つくづく東京の復興はこれからであり、またますます質の高い街になっていくと思いながら、業界のことに思いを馳せた。




2003/09/08 磯村信夫