個人消費性向引き上げのために


昨日は大安で結婚式が集中した。結納式で水戸のホテルへ出向いたら、午後にそのホテルで3組の結納式があった。
仲人を受ける前に「あえて仲人を立てる時代ではなくなったのでは。もう一度よくお父さんと相談してください」と申し上げたが、結局仲人を立てることになり引き受けることにした。今東京都内の結婚式では殆ど仲人を立てない。だからメインテーブルは2人掛けで花の装飾も半分になっている。水戸市は上野から特急で1時間と近いが、伝統を守っている人たちも多い。
この年齢になっていようやく分かったのだが、略式は結構。しかし本式を知らずに略式をするというのはいただけない。必ず儀式には先人たちの知恵と意味付けが含まれている。堅苦しいのはごめんだが、幕末に日本人がアメリカから欧州へと世界一周したときに珍しがられた一方で敬意を持って見られたように、この慎みが人を人たるものにする。

さて、2005年を過ぎると結婚式披露宴は少なくなる。特に大きな披露宴は今以上に減ると言われている。私が出席させていただく披露宴の3分の1はレストランウェディングや本当に内々で済ますものになった。欧米に近づきつつあるのだろう。そうなると結婚式の花は当然のことのように二極化する。
脇道にそれるが都内の一流ホテルでは衣裳部屋を作り替えるところが多い。男性で45歳前、女性なら40歳前を最終の目睹に結婚をする人たちが増えてきている。晩婚化である。こういうカップルは料理も花も価値ある物を使用される。そこで衣装部屋だが20歳台の花嫁さんと40歳前後の花嫁さんが同じ部屋で着替えることのないように配慮され、ホテルの衣裳部屋の改造が行われているのだ。花もバラがメインであるのは同じだが、それ以外にどのような花を使うかによって値段に幅を持たせている。

さて、サラリーマンは源泉徴収された後のお金で個人消費をする。そうなると他の消費財と同様、花も安くて良い物でないと買ってもらえない。「良い」というのは「活きが良い」ということと「エスプリが利いている」ということだ。このエスプリの利かせ方が大変重要で、良い小売店かそうでないかの分かれ道である。エスプリの利いている国といえばやはりフランスだが、国内産に加えオランダの市場からのものも多く売られている。フランスの小売店はまず花市場に行き、その足で青果市場に行って果菜類を、場合によってはレタスなどのような葉物野菜を仕入れる。季節感を出したり、おしゃれに演出したりするためだ。

日本の花屋さんもこのように変わっていく。今週の金曜日はハロウィーン。「カボチャ市」では昨年の5割増の取扱量だったし、地方都市でも売れ行きはまあまあとのことだ。そして11月22日は「いい夫婦の日」。バラを販売する日である。
結婚式需要が少なくなる中で、このようにひとつひとつ新しい季節のアクセントを付け、11月であれば文化の日や七五三などをも取り込んで着実に消費者にアピールすることが、今の花き業界の重要な仕事である。




2003/10/27 磯村信夫