「良い」


判で押したように過去2年の相場が良かった時期に価格が暴落する。切花も鉢物も同様だ。先週お話をしたとおり、小売店は10日毎に市場に支払いをするため買い控える。またセリで最初に値段をつけないと気が済まない(これを当社では「頭買いの人」と呼んでいる)という気風の良さを売り物にする買参人が年々少なくなってきている。みんなが買ったら自分も買おうという群集心理で、二番煎じの法則が働いている。産地にしてもお花屋さんにしても二番煎じ、二匹目からのドジョウの心理が強くなってきている。これは花き類だけでなく今年は青果・水産にもこの不安の波が押し寄せている。

これを打開するためには当たり前のことだが凡事徹底に尽きる。秘策はない。変革、変革というが、つまりは当たり前のことがなされていなかったのを本来の「良い」仕事が出来る人や組織になろう、悪いところがあれば改善しよう、このことによって自分たちの業界を良くし、日本を良くしようとういことである。では、「良い」とはどういうことか。それはアリストテレスが言っている「良いラクダ」を思い起こしていただきたい。「良いラクダ」とは重い荷物を背負って長時間運べる「ラクダ」のことだ。すなわち本来の機能を十二分に発揮する物や人や組織、或いはシステムを「良い」という。まずは自ら「良い」を精一杯行うこと、これしか我々に出来ることはない。我々にとって「良い」は自分にとって「都合が良い」ということではないのである。「良い」とは独自性であるものだから。




2003/11/10 磯村信夫