来年の仕事の仕方


早くも12月。この業界で今年最も変化を感じたことといえば、小売店のロスを軽減し、在庫を持たないという考えが定着し、販売計画を立て、次いで仕入れ計画を立てるというPLAN-DO-SEEで仕事をするようになったことです。ですから、土日の週末にお天気があまり良くないと仕入れを控える。相場が下がると、つい手を出してしまうので、セリ場から離れたり市場に来なかったりというような人が多くなりました。ですから仕入予定日に、需要量の1割入荷が多ければ3割安となってしまう。
こういうことが繰り返されるようになってきました。在庫を持ちたくない気持ちは仲卸さんも一緒です。ですからお天気が良く、店で売れれば仕入れに向かいます。このように堅調相場が続いたのが5月の母の日と10月でした。一方、安かったのが8月のお盆と11月でした。これまではエスカレーターの上げ下げのような相場展開でしたが、今年はややもするとエレベーターの上げ下げのような極端な市況展開となりました。
小売店の心理で昨年と最も違う点は、昨年は荷薄で上手く仕入れられるかどうかという不安がありましたが、今年は消費者の財布の紐が固くなり売れるかどうかが心配になっているということです。

一方、荷主さんも需要が見込める物日の生産を厚くしています。過去2年間良かった所の生産量が増えています。過去相場が良かったところにもしっかり作り込みがあります。いずれも今年は安値となってしまいました。

このような状況の中、どのようにすればいいのでしょうか。それはもう一度サプライチェーンをしっかり確認することから始めなければなりません。生産者の立場で言えば、自分の取引先の卸売会社はどこか、そこで誰が自分の花を買って消費者に届けてくれているか、卸と買参人との信頼関係を強化し、その買参人の要望を聞き入れて作型や品種などを検討することです。今まで市場に出荷するということはあたかも不特定多数の買参人に買ってもらう、生産者はこのような意識でしかありませんでした。供給が多くなり競争が激しくなると、当然契約に近い取引を結んでいく必要があります。他業界では1980年代から行われているコントラクト取引というものです。花もこれに近い流れを作っていかなければなりません。
日本では20世紀後半はまさに「平等」を実現すべく「量」の成長を行ってきました。しかし、今「成熟故の停滞」と「グローバリゼーション」が重なって、消費が不活発です。こんな不安なときにこそ花のある生活をして欲しいと、花き業界の誰もが仕事に勤しんでおります。しかし、法人がそうである通り、真っ先に花の経費を削減されてしまっています。現実に観葉鉢が造花に取って代わられたところが数多くあります。そのような中でも私たちは人心地つく家庭に花を贈り届けようとしています。ですから産地は仕事屋さんだけでなく、小売店さんとの連携をしっかり持って、繰り返し自分の荷物を使い続けてもらえるようコミュニケーションをとらなければなりません。荷物を仲立ちしている卸売会社や仲卸の社員にその旨を言ってくだされば、どこの会社でも喜んで信頼関係の結びつきを構築します。これが真っ先にやらなければならない不確実性の排除です。お天気ばかりは仕方ないにしても、「人事を尽くして天命を待つ」ことによりお得意先の販売計画に自分の荷物を入れてもらいたい、少なくとも仕入れ計画の中に組み込んでもらえるよう販売を委託した卸売会社の社員にその旨を伝える必要があります。

売るのが面倒な時代に足りないのは「需要」なのです。それぞれが販売について今以上の努力をするようお願いします。




2003/12/01 磯村信夫