買参人は“お客様にまた来て頂くこと”に焦点を合わせている


昨日は千両・苔松・苔梅市であった。
事前情報と違い4等や5等という等階級を各産地で見た。昨年は台風の被害で悪い物も売れたので、切らずに畑に置いておけば株が充実するものを、株が充実する前に、今年も切り込んでしまったのか。
どこの卸売会社でも、入荷は箱数にして下位等級が1割ほど多かったようだ。一方花屋さんの仕入れは、昨年少し売れ残ったことと、今年も景気が回復しなかったから良いものをお届けしたいが、余らせるのは嫌だと、1割減の仕入れを考えていたようだ。入荷が1割多く、買う方は1割減を予定しているから、とどのつまりは荷が2割多かったことになる。そこで価格は4か5割安となったわけだ。

今年のシクラメンの相場を見ても分かるとおり、買参人には良い物をそれなりに売っていこうとする気持ちが強い。「良いお客様を逃がさないように繋ぎ留めておこう」とである。確かに小売現場などでは景気は最悪期を過ぎて、時代の急務をいち早く捉えた店は昨年より10%以上良い。ミニミニブーケやミニアレンジの代わりに1,500円以上3,000円くらいまでの家庭用の花束が売れている店が出てきた。しかし、実際は消費者の気持ちの変わり方に付いていけず、低価格やミニミニで販売しているところが多い。

成熟ゆえの衰退期で、商売人にとって大切なことは、機を見るに敏である。そして、それを商品化することだ。小売店においての商品化はお分かりだろうが、生産者においても、私ども卸においても商売をしているわけだから、時代に合った商品化が欠かせない。
弊社のことで恐縮だが、この上半期、最も利益を稼ぎ出したのは(遺失利益を防いだのは)ロジスティック本部であった。営業は昨年よりも単価が安く稼げなかった。ロジスティック本部はそれを埋めたのである。出荷者の商品化とは、昨年何回かお伝えした3つの品質「商品品質・市場品質・社会的品質」である、この中で商品品質が良いのは当たり前で、農薬問題などをクリアする社会的品質も当たり前である。今、その出荷者の価値は市場品質の優劣に移っている。トレーサビリティまで含めた情報や商品の納期、これを昨年来から要請しているが、「日々の作業のここをきちんとこなす。そしてその上に3つの品質で自分の独自性をどのように出していくのか」その戦略の実行に入っていく。これが産地の今という時代における仕事の仕方である。

昨日の千両が安かった理由は、切るタイミングで生産地の多くが昨年の続きで仕事をしてしまい、動きの速い今の時代を捉え損なったためであった。安く仕入れたであろう小売店も結局得はしない。囚人のジレンマに陥ってしまうからである。結局誰も得をしていない。




2003/12/15 磯村信夫