激しい競争で鍛えられた花き・青果業界の競争力


1985年、プラザ合意で2倍の円高になった。それ以降卸売物価は下がったが、消費者物価はあまり下がらなかった。しかし、1999年、突然消費者物価は下がり始め、今でも下がりつづけている。一般的には原因は2つあるとしている。規制緩和と流通の合理化である。
規制緩和の説では、構造改革で内外の価格差是正の成果が表れ始めたという。競争が激化し、まさに日本も大競争時代に入ったというのである。もう一つはいわゆる「中抜き論」である。今まで小売段階の競争が充分でなかったから、大店法の撤廃とともに、ウォールマートが西友の株式を取得し、日本に乗り込んでくるというので競争がより激しくなり、スーパーの床面積は増え続けている。例として挙げられているのが卸段階の売上と小売段階の売上の対比である。アメリカに比べ、小売に対する卸の売上が大きすぎるというのだ。

しかし、日本の食品小売業界の競争は世界で無類の激しさである。例えば、1万人当たりの店舗数は日本は41店、米国7店、英国13店、フランス14店、ドイツ22店であるし、1k㎡当たりでは日本は1.43軒、米0.02軒、英0.31軒、仏0.1軒、独0.3軒である。従って日本の競争レベルはアメリカの70倍、英仏の10倍、フランスの3倍である。ドイツを除き花小売店以外のデータは手元にないが、日本の花店はドイツの3倍の競争である。日本は専門店だけでも人口5千人に1店舗の割合で存在する。
これだけ日本では競争が激しいから、今でも生鮮食料品や花の消費者価格はコストで水道光熱費、輸送費、建設費や家賃などと比べ、大変低く抑えられているのだ。競争のレベルはウォールマートの経常利益とイトーヨーカ堂の経常利益を比べてみれば、いかに日本では競争が激しいかがわかる。少しでも競争力のない価格を提示してしまうと売れ残ることを意味する。
日本の小売店を支えているのは、中間流通である食品卸、卸売市場が健全に機能しているからである。日本の中間流通業者はアメリカとは発揮機能が際立って異なる。日本の流通システムは複雑ではあるが、効率的に機能していると言ってよい。であるから、総合商社は川下に投資されたあと、食品卸など中間流通をコントロールしようとしている。

小売流通がこれだけの競争を毎日しているということは、仲卸・卸の卸売市場も毎日激しい競争をしているということだ。そして、日本の花き・青果生産者も激しい競争を行っている。その競争レベルは世界で無類である。従って、今日の日経産業一面に榊原慶応大学教授が農は輸出産業になるとその可能性に言及しているのである。デフレだから、コスト削減は日本の全産業で達成されていなければならないが、質こそ量を生み出す力があることを肝に銘じ、激しい競争に打ち勝っていこうではありませんか。




2004/02/16 磯村信夫