消費者の一段階上の欲求


今日は上値が重たい。中間はしっかりしているのだが、品質差が価格に反映されていない。だいたい3月の市況は卒業式や仏花需要などでその傾向が強いが、小売価格が抑えられ、小売店の利幅を計算すると、結局上値が重たくなるのだろう。
消費者は品質のことをもう良く知っているのである。友達に会うと、僕が花の卸を経営していることを知っているから、「あそこの花は良かった。しかし、ここの花はいまいち。」など、男性でも結構品質のことを口にする。確かに街でお花屋さんを見ると、かなりの有名店なのに優品か秀のSなどを使っていたりする。短くするのだから長さはいらないかもしれないが、名の通っている店なら秀のM以上を揃えてもらいたい。この店のように用途に合わせて切花を仕入れる小売店が多くなっているが危険だ。消費者にそっぽを向かれる可能性がある。今から5年前ならよかったが、消費者は学習し、品質を知るようになったから、Sサイズの用途なら秀のMを買う、Mサイズの用途なら秀のLを買って短くする。小売店にとってこういう努力が欠かせなくなってきている。
そしてそれを実行し、毎年この不況下でも伸びている小売店が何軒もある。また予算内で最も良い物を買おうとする小売店も伸びている。例えば取引のあるお花屋さんがスプレーギクを買った。予算はだいたい××円だ。普段はA産地のスプレーギクを買っている。今の相場は普段の10円から20円プラス。余分に出すか、××円の物を仕入れるかである。そして彼は××円で買える産地の物を買った。しかし秀のLである。妥協してもせいぜいこれくらいまでだ。このお花屋さんは相場の安いときにも××円で買える物の中で最高のものを買う。もっと相場が安くなっても××円の予算だから、今まで買えなかった最高のものを買う。このように彼は予算に従って行動している。だからいつもキャッシュで仕入れ分を支払う。買い上げ額も伸びている。質を訴求して消費者の質への欲求を上手く捉えているのである。

しかし不景気のせいか、質へのこだわりがなくなってきている小売店が増えている。一銭でも安く仕入れないとお店が立ち行かなくなっていると思っているのかもしれない。その気持ちはわかるが、消費者をごまかすことはできない。統計によると一人の消費者は300人とつながりを持っている。花のことが話題になれば、その300人がまた300人に言う。この9万人のお客様を意識して商いをしなければならない。地道に努力しているお店でなぜそこまで売れるのかと驚かされる花店がある。それは口コミが伝わり評判をとった店なのである。鮮度、すなわち上位等級品、ここにこだわり、2日間で売り切る努力をする、ここが小売店のポイントである。だから生産者も荷を溜めてはならない。




2004/03/15 磯村信夫