小売店の採用状況


花の小売店に就職するということはなかなか難しいそうだ。まずは一度働いてみてというインターン制度や、アルバイトとか、それも1年だけではなく、3年、5年ということもあるそうで、そこから「繰上げ当選」でようやく社員になれたということもままあるらしい。小生の良く知っている恵比寿にある外資系ホテルの花屋さんも、アルバイトなら採用するが社員となるとほとんど採らないそうだ。「お花屋さんになりたい」は多くの女の子の夢でもあり、実際専門学校や大学に行きながらフラワーアレンジメントスクールに通っている人もいるが、社員となるのは難しそうである。
流通業は一般にパート・アルバイトの比率が高いが、花の小売店で問題なのは家族経営であること、それが公私のけじめをつけにくくし、仕事の改善もなんとなくうやむやになってしまうことである。年商5千万円以上の店舗でも家業の域を出ず、「母の日前の3日間はどうでしたか」と聞いても、売上や販売点数などの数値を言える人は稀であった。花屋さんは働き者が多く、朝早くから夜遅くまで仕事をし、店によっては年中無休というところもある。それ自体大変すばらしいことだが、もったいないことに目的がぼやけてしまっている。あるいは持っていない人もいる。経営でいうと結果にコミットメントする姿勢が他の業界と比べて弱い。早く時代に合った経営をしてくれれば新卒者の採用も含め、好循環が生まれてくると思う。

日本の流通業で成功するには、ひとりあたりの労働生産性を高めることを一義にするのではなく、面積当たり、或いは施設当たりの回転率を上げて生産性を高めていくことが必要である。それは他の先進国と比べ、地価や労賃が下がってきたとはいえ、依然として割高だからである。そうなると当然一部の考えて実行できる人とそれ以外の言われたことをやる人の処遇や労賃格差が広がっていくことはやむを得ない。しかし、花の小売店にとって店が繁盛するには、家族にはない価値観で意見を言うことができる社員を持つことが必要だと思うのだがいかがであろうか。




2004/05/17 磯村信夫