ニュー・ラグジュアリー


先週の土曜日、母のところに行ったら、玄関に飾ってあったアジサイの水が切れていた。「朝と夕方の2回水をあげているのに・・・」と言っていたが、早速水やりをするよう妹に言った。

昨日、米・欧・日の消費マーケットで起こっている「ニュー・ラグジュアリー」商品を中心にタウンウォッチした。いままで二極化消費と言われていたが、手の届く贅沢品が出回るようになって、普通の値付けのものが価格落ちして企業が立ち行かなくなっている。しかも「ニュー・ラグジュアリー」は量も売れるようだ。あらゆる商品に起こっていることなので、その現場を見て体験していこうと思った。
「ニュー・ラグジュアリー」の話の前に、日本橋高島屋の1階正面にアジサイが植え込んであった。これも1株水が下がっていて、一流デパートなのにこれはいけないと思った。他の花もそうだが、それほど水をやらなくてもよいDNAを導入するべく、育種家の努力と生産者の用土の工夫を期待したい。そうでないと私の母ではないが、「アジサイってもたないのよね」でこれ以上の消費の増加は期待できない。

さて、「ニュー・ラグジュアリー」商品では、花王のヘルシーオイル“エコナ”やカテキン飲料の“ヘルシア緑茶”、「オールド・ラグジュアリー」ブランドのメルセデスベンツが“Cクラス”を導入したことなどが有名だ。エルメスやシャネルは二極化の上位狙いの姿勢を変えていないものの、クリスチャン・ディオールでさえも少し中間所得層寄りになってきている。
「ニュー・ラグジュアリー」で成功したファッション関連の“コーチ”が良い例で、百貨店では新宿伊勢丹が「ニュー・ラグジュアリー」商品を非常にうまく取り揃えている。地域によって価格帯は違うと思うが、伊勢丹の「男の新館」では、靴の売れ筋は5万円から7万円の物が最もよく伸びている。ナイキが出資しているスリッポンを生み出した“コールハーン”は、2000年に並木通りにもブティックを出している。フェラガモもハリウッドで靴を手作りし名声を得たが、狙いは今で言う「ニュー・ラグジュアリー」であった。
日本橋高島屋と銀座松屋、新宿伊勢丹を時間をかけてみたが、確かにボストンコンサルティングが言うように、その人がこだわっているものにお金をかける姿勢が見てとれた。その人にとって必需品なのだ。レナウンの子会社レリアンでやっているバラの専門店ローズギャラリーでは、バラを一輪一輪和紙にくるんで箱詰めをして、簡単に持ち帰れるようにしていた。バラ好きな人のこだわりを大切にする姿勢がここまできているのかと教えられた。

先週号の『週刊東洋経済』の特集記事「花き産業は三部咲き」の通り、花は新たな消費者の獲得に成功しているわけではない。しかし、花好きは確かにいて切花にせよ、鉢・苗物にせよ、商品知識が豊富になった消費者は自己実現のひとつとして花を買うようになってきている。花売場が多様化しており、他商品と同様、安くて質の良い花束やアレンジが多数出回るようになってきた。
一方、日比谷花壇や六本木のゴトウ花店、第一園芸の3社は日本が世界に誇る専門店である。この二極化から「ニュー・ラグジュアリー」とも言える青山フラワーマーケット(パーク・コーポレーション)、プレジュール(フローリィネット)、ベリーメリー(日比谷花壇)、フラワーノート(第一園芸)に加え、クリスチャン トルチュ、ダニエル・オストなどの外国ブランドが脚光を浴びていくことであろう。

大切なことは顧客の生活様式の変化、テクノロジーの変化、政府の政策・規制緩和、競合状態の変化の4つをウォッチし、自ら変わっていくことであろう。




2004/05/31 磯村信夫