他力ではもう難しい


大田花きのセリ場には各県の経済連や全農県本部東京事務所の花き担当者が気配情報などをとる席がある。そのメンバーが4月以降半数近くに減った。系統農協の販売事業で、花きをどう扱うか検討した結果、人員削減や花き課の統廃合が進んだ結果なのではないかと思われる。系統農協にとって販売事業はなかなか採算に合いにくいものであった。特に花は品種数が多く、スケールメリットを出しにくい。単協あたりでいくと10億円は扱わないとしっかりした指導、販売体制、また集出荷所の運営などができないと言われている。これは花の卸売市場でも同様である。10億円未満のところは生産者の協同意識に基づく労働提供によって成り立っている。
花だけではなく青果も4月から系統農協の損益を明確にしていく姿勢が強くなってきている。依頼先の運送店などが産地の集出荷センターの労働の肩代わりをするところも出てきた。

さてここで疑問なのが現状分析や「無駄取り」を行って方針を出したのだろうかという点である。例えばウォールマートが実質西友を買収し、地道な改善業務を行っているが、ウォールマートらしいと思われるのは、西友の集配センターにストップウォッチを持ち込み、1秒単位で作業分析し、動作の無駄を取り除こうと努力していることだ。ウォールマートの現CEOはロジスティクス部門の出身ゆえとも思えるが、基本的に小売流通はロジスティクスの上に商流が乗っているのである。 この行動分析プラス床をきれいにすることなど、日本でいう5Sを徹底しているわけだ。よく言われるのが、バブルが崩壊して10年以上経つのに日本人はまだ成長経済を回復できるかもしれないと思っていること、世界で最も祝祭日数の多い国なのに、努力しなくてもゆとり社会が作れると思っていること、まだ他にもあるが、基本的に認識間違いをしている日本人が多い。ベンジャミン・フランクリンが言うように、「時は金なり」であって、ゆとり社会を作るためには、それぞれの人たちが努力し、利他自利を行ってこそ生まれるものだし、日本人の人口動態を見ている限り、またここまで豊な社会になっている日本を思うと、なぜこれ以上成長する必要があるのか、またできるのかを真剣に考えなければならない。このような無駄分析を行って改善策を立て、各系統組織や卸・仲卸は次の方向に進み出したのかという疑問が残る。

青果の方には失礼だが、花にはまだ発展の余地がある。そして、中間流通である卸売市場も今後アドバイス機能が強く要望されるようになると、アイテム数が多いという集散機能だけでなく、存在していく価値はある。しかし、現時点では米国と同様に生鮮食料品価格が下がるとともに、花の価格も下がっている。ヨーロッパでは花は嗜好品であるため、生鮮食料品とは違い、20年程前からすでに別の動きをしている。個人消費が一般化しているためであろう。日本の花き業界の現状は切花は横這い、鉢物は下がり気味だから、今期は目先の利益に捕らわれず、当たり前の努力をきちんとこなしていき、レベルアップする以外に方法はない。




2004/06/07 磯村信夫