ITで現場力、納得して進む


今日のセリ前取引で、7月の盆需要は終わったことになる。セリで買っていたのでは間に合わないからだ。今年の盆需要で昨年と違う動きをしたのはハスとホウズキであった。日頃からホームユースをターゲットにチェーン展開している花店や伝統的な仏花を扱っていない花店は季節の花としてハスやホウズキを仕入れ、アレンジにしたりガラスの器を付けて販売したところ、予想以上によく売れたとのことであった。「夏場は常時置いておきたい」と要望されたが、産地と卸売市場のからすると予想外の提案だったので、「8月のお盆まで暫く休みですね」とお断りせざるを得なかった。

これと同じように既成概念で失敗したのが今年のサマーギフトである。産地会議でお隣になった東京青果(株)の取締役の方に「果物は今年まで含めて2年連続1番人気のアイテムでした。磯村さん、さぞ花もよかったのではありませんか?」と言われ、一瞬返答に窮した。デパートのギフトカタログから観葉植物などが掲載されなくなって何年たっただろうか。こちらはすっかり使われなくなったと思い込んで商品開発や提案の努力を怠っていたのだ。コチョウランを中心にラン鉢やアンスリウム鉢、観葉でもおしゃれな深鉢仕立ての物や、用土の代わりに色のついたビー玉なおどを入れたものなど、提案することはいくらでもある。来年は遅れを取り戻そうと思っている。

以前、小欄で触れたように、商売していくためには、消費者のライフスタイルや価値の変化、ITなどの技術革新、政府の政策変更や規制緩和、競争状態の変化の4つに注目しながら自ら変わっていかなければならない。
盆需要期だったので営業担当者が手が離せなかったため、先週新潟と秋田に出張に行って来た。今年から始まった米政策もしくは大綱で青果・果樹・花きへの取組み意欲は米どころほど旺盛である。先進国の中で唯一日本の夏だけは亜熱帯気候になる。この暑い夏にどのようにスムーズに販売していくか。また、盆が7月と8月にあるので、日本の夏だけはまあまあ花が売れる。しかし、この「盆」という物日は1950年代後半生まれの世代から他の日本の伝統的な価値感と同様に文化の継承がうまく行われなかったので、需要量が落ちていく可能性が高い。
そうなると米どころの北陸・東北などの産地は俊敏に変化に対応できるようにしておかなければならない。農協の部会は一丸となって早めに変化し、リスクを回避するためには情報の共用化が欠かせなくなる。一般に「情報」と言っているが、IT用語では「知識」と言う。「ナレッジ」である。ナレッジは情報プラスノウハウでコンピューターネットワークを通して行っていくのがeラーニングである。農村部はかつて有線放送があって、一体感が強かったが、今は集出荷所に荷を持ってきて農村の皆で懇談する。或いはどのようにその事態に対処するか、一部の部会員がミーティングするだけになっている。
これだけだとすると的確に組織として安値に対処できない。年配者が多いこともあろうが、農業ほどコンピューターネットワークの恩恵に与かれる業種も少ないと思う。農協の花き部会は事務局を農協に置いており、そこが外部との情報受発信の窓口になる。内部ではグループウェアを組み、お互いメール交換ができるようにする。農協の花き部会をまとめて発展させるために欠かせない手法である。IT設備投資を行わない限り、デフレの昨今、現状を維持することすら難しい。
今日あるのは昨日努力したお陰。今日は明日の努力をする。これにより明日も生きていけるのである。ITによる組織力と言ったが、実は現場力が今ほど問われている時代はない。それは三菱自動車の例を引き出すまでもないことである。




2004/07/12 磯村信夫